三面楚歌5(北京ダック) ページ13
「北京ダック!」
Aの一声で、店の奥から彼が出てきた。
その名前を呼ぶと、北京ダックがゆったりとした動作でのれんから顔を出す。
北京はAが初期の頃から契約を結んでいる食霊だ。彼は聡明で何事も冷静に片付けてしまうため、何かあったら彼を呼ぶようにしている。
まだ契約はしていないが、信頼できる力と強さを持った食霊である。
「どうしましたか?」
そんな言葉が出てくるような表情を彼は向けるが、それはすぐになくなり、険しいものになった。
彼は2人の間に入り、細かく状況をきくため、2〜3会話を交わす。
内容はわからなかったが、彼が言葉をしばらく並べた後、2人は一度各々の武器を手に取り、それでも北京がひるまず話をすると、2人はしぶしぶ武器をしまい帰り支度をする。
三つ巴の戦闘になりそうになったところを、どうにか北京が丸く収め、2人をどうにか帰らせた。
助かった。
ひとまず危機は去った。
Aはほっとひといきつき、接客中だと言うのに食堂の椅子に腰掛け安堵する。それから北京ダックに礼をいうと、彼は軽く返事をしてから考え込むようなしぐさをする。
「それにしてもA、今後もこうして無理やり契約を迫る食霊も多くなってくるかもしれませんね」
「やだね。それは」
「それを解決するために、私とAでもうしてしまいましょうか」
考えるしぐさのまま、しかし勿体ぶったように目的語を言わずAの横に腰掛けるので、Aは彼に耳を傾けた。
そうしてようやく彼の口から答えを聞くことができた。
「契約、してしまいましょうか」
「え、」
「私たち、もう付き合って何日も経ちますし……そろそろ……結論を出してはいかがかと……」
Aの隣にゆっくり腰掛けた彼はそう言って、最後に意味深に呟くのであった。
「待ってますよ。あとで私の部屋に来てくださいね……」
───𝑒𝑛𝑑.
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作者名:月石 | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/moonstone
作成日時:2023年9月9日 21時