御令嬢は漫才師であらせられる (ページ22)

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Eighteen ページ22

河井side

河井「ほんっま彫刻みたいな顔しとるわ」

バツウケテイナーの楽屋に一番乗りかと思ったらAが寝とった

眠った表情は初めて見る。

俺の知らない彼女は何人おるやろうか。
顔にかかった髪を耳にかけてやりながら考えた。

閉じられた瞼、それにつながる長い睫。

すらりと高い鼻。
一文字にくくられた赤い唇。

あの日白雪姫を救った王子様も、こんな気持ちやったんやろうか

首が有り得ん方向に曲がっとってこのままじゃ起きたら痛いやろうから、と自分に言い訳してAの頭を俺の脚に乗せた

「警戒心無さすぎひん？」

ぎゅ、っと腰に回る腕。
力なく俺をしめつける。

どうしてお前はこう……どうして……。

「お前さぁ……あんな部屋で、寂しくないんか……？」

昔行ったこいつの家を思い出す。

ベッド、テーブル、マガジンラック、全てが生活みに溢れているけど
あそこに住んでいる彼女はどこか、こう、
この部屋の住人とは思えんかった。

彼女自身に生活感というものはなかった

「俺がそばにおったる。そばにおってAを……」

この世界の住人にしたるわ。

こんな世界から連れ出して、普通を教えたるて。

独特な考えしか出来へんAやから難しいかもしれへんけど、少しずつ全部俺が教えたる。

恋も、友達も、遊びも、全部､全部

全部俺が教えたる。

寝ているのに泣いてるように見えるんはなんでなんや。