御令嬢は漫才師であらせられる (ページ19)

今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:59,721 hit

Fifteen ページ19

昔から同い年の子とは合わないと思ってた

そして誰も居ない真黒な世界で生きていた。

私に向けられるまるで珍しいものを見るような目。

家に不満はない
祖父母も両親も私を愛してくれているし､弟も妹も私を慕ってくれている

それでもノーフォーク公爵令嬢として､ハワード家の人間として生きるのは､どこか窮屈だった

思考の渦にハマると抜け出せなくなる

そういう時､私はいつも行くところがあった

凛「いらっしゃ～いって初音か～」

『私じゃ不服？』

凛「イケメン連れてきてよ､学校に友達いないの？？」

『煩い､凛だって友達いないでしょ？』

凛「だから私は凛じゃなくて、エレーナ！」

凛は日本人だけどイングランド国籍で、
日本人なのに中華料理のレストランを出すというチグハグは家庭に生まれた(本人にがそう言ってた)。

凛「Aさぁ……もっとゆっくり食べなよ」

よく覚えてないけど凛は俗に言う面倒見のいいやつで、料理も美味かったし性格も申し分ないし､容姿も可愛かった

そんな”いいやつ”が何故私に構うのか今も昔もわからない。

凛「もっと女の子らしく～とか思わないの？」

凛の声は女子の割には心地の良い低音で、あの頃の私の語彙力ではどうにも例えることは出来なかった。

けど強いて例えるなら、赤ん坊が心臓の音で落ち着いて眠ったり、
お気に入りのタオルケットに包まれて眠る感覚とよく似ている。

私は凛お手製のラーメンをすすりながら返事をした。

そんな行儀の悪い私に苦笑しながら紙ナプキンで口元を拭いてくるあたり、
こやつはやっぱり、年上のオニイサンとでも付き合って主婦をしているのが１番しっくりくる、と幼心に思った。

『思わないよ。だって女らしくしたら女の子と仲良くしなきゃいけないじゃない。
そんなの絶対に嫌。嫉妬と憎悪にまみれて表は仲良く友達ごっこしてる生物の仲間になんかなりたくない』

小さいころから私は家柄のせいでそんな女の恐ろしい部分を見て育てられた。

私を取り巻く環境は優しい日の光みたいなのじゃなくて、
漆黒の闇と悪が織り交ざったドロドロとした粘着物みたいな感じ。

人の感情は何かしらの化学反応が起こって芽吹くんだ、と誰かが昔言っていた。

その言葉が正しいなら女の関係とは嫉妬と憎悪、そして言葉に表せない
人間の闇の部分が混じって出来た関係なんだろう。

すると物思いにふけった私を見て凛は笑った。

”その顔､凄くAらしいよ”、と。