御令嬢は漫才師であらせられる (ページ16)

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Twelve ページ16

『……………………はぁ』

尼神インターと別れた後
てるを家に誘って､帰るその道中イヤホンをして街を歩く

流れるのは昔、遠い昔に気に入っていた曲。
他の音楽は絶対に聞かないのに、どうしたってこれは聞いてしまう。
その音楽は耳を伝って脳に入り、私を甘やかした。

心地よいこのリズムを聞くと、どうしたって泣きたくなる

『止めた､失恋したわけじゃあるまいし』

イヤホンを外すと、スマホの中に囁く。

『どうしよっか、凛。これから』

昔は純粋だった。

真っ白な感性で些細な事を感じ取り、父の元で学び母と笑い妹と弟達と遊び

そこらの令嬢と何ら変わらなかったはずなのに

けど、日が経つにつれてそんな純粋なままで居られなくなる。

利益に目がくらんだ大人たち。
金と自分の名誉にしか興味がない、そんな大人たちが私の側にやって来た。

私はそれをどうにだって思わなかった。

耳元で囁かれる甘い言葉も、手渡される金もどうだっていい。
私には自由さえあれば。家族がいれば。

それさえあれば私には少しでも生きている価値がある。

もしそれがなくなれば・・。

私にとってこの世界はどうでもいいバカな社会になって、
この世で生きることに絶望するだろう。

『凛ならどうする？真面目に働く？それともこの世から居なくなる？』

画面に話しかけたって帰って来るのは笑顔。

無駄な事だとわかっているけど、私がこんな病んだ相談が出来る数少ない子だった。

『さっさと帰れって？わかってるよ､てる来ちゃうもんね』