御令嬢は漫才師であらせられる (ページ14)

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Ten ページ14

あの人は他の人と違うんだ、私とは違うんだと思い知らされたのは､初めて家にお邪魔した時

あの後､渚とお礼を言いに行って、お詫びにご飯でもどうですかって言った時

『ごめんね？この後ちょっと用事あって……初対面で申し訳ないんだけど私の家はどう？』

なんてAさんにはなんのメリットもない提案をしてきた

『やる事あるからそこ座ってて』

誠子「あ……はい」

そう言って､先輩はなにやらバタバタしとった

なんでとそんな事なんて言わせない威圧感が彼女にはあった。

大きなソファーに大きなTV､大きな本棚にラックが2つ。
ラックには何枚ものCD。

普通､漫才師を志す人間は誰か憧れがあってその人の漫才のDVDを何枚か持っていることが多い

渚「尊敬してる漫才師とかいないんですか？」

『好きな漫才師はいるよ。でも見たりはしないかな』

渚「じゃあ誰のネタも見ないんですか？」

『見ないねぇ』

誠子「なんでなんですか？」

『きっと貴方達にもわかる時が来るかもね。
自分達が作ったネタで何人が幸せになって、何人が不快になるか。そう考えて、考え込みすぎて怖くなる時が。』

”だから誰も尊敬しないの”

『それに嫌でもこの仕事してたら聞かなきゃいけないしね』

よく覚えている。
Aさんが初めて見せた笑顔は太陽の様だったことを。

それ以来、渚も私もAさんを慕い､懐くようになった。

最初は食事だけだったのが､徐々に買い物に行ったり、Aさんとどんどん仲良くなれて嬉しくて。

誠子「ねぇ、こっちとこっちどっちのが私に似合いますかね」

『誠子ならどっちも似合うと思うよ』

誠子「んーでも値段がなぁ」

『貸して､どっちも買ってくるよ』

なんてイケメン顔負けなこと言ってくれはったり。

『渚が食べたいって言ってたやつ買ってきたよ。誠子と食べな』

なんて小さいサプライズをしてくれたり、少し……いやだいぶ彼氏みたいなAさん

そしてなにより可愛い

『2人とも可愛いねぇ』

誠子「姐さん鏡見たことあります？私らこんなブスですよ？？」

渚「誠子､お前と一緒にすな」

『うんうん、可愛い可愛い』

そう微笑むAさん

あぁ、もうっAさんのが可愛いですよっ！！