【2j3j】だって貴方 -2-【knmc】

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「…いいのかな。自分の為に何かを買って。」






今まで、自分にものを買ったことは殆どなかった。

私が生活で来ていた理由は施設のお陰で、病気と最後まで闘えたのも周りの人たちのお陰だ。


あの時私が来ていた服だって、施設で用意されているものだったわけだし、病気がだいぶ進行した頃には、服を着させてもらう、起き上がる補助、歩くことさえ手助けしてもらっていた。



そうやって人生を過ごした私だ。何かを自分に買い与えている暇などあったら、誰かに何かを返すべきだと思っていた。

いや、正しく言えば、今でも思っている。




そんな私が服を買う。


高々服でと思うかもしれないが、いかんせん私の生きていた時代は、生きてきた時代は服は貴重だった。





…やめよう。何かを買うことなど。

私にはきっと似合わない。


こんな綺麗な服を着ることも、何かを買う事も。







「…お兄ちゃん、やっぱり服は…」

「Aさん」




「僕は貴方が、あの服を着ている姿が見たいです。」

「え…」



「貴方が昔から、何かを自分に与えたり、与えられたりすることを悪としていたことは知っています。」

「でも…」



「でも、僕の為なら、それは貴方の思う“悪”ではないでしょう？」






あぁ、この人は何て優しくて、なんてズルいのだろう。

そんなことを言われてしまっては、もう答えは一つしかない。






「…うん。あれ、買おう。」

「お兄ちゃんの為に、ねっ？」



そう問いかけた時に見た彼の顔は、とても嬉しそうだった。

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