見抜かれる話 ページ10
時折新一も同じ目をするものの、やはり優作さんには敵わない。おれは一言、「そんな突拍子も無いことあるわけないだろ」と返せばいいのに、それさえもおさえつけられたように上手く言葉が出てこないのだ。言い返してしまえば頭上に舞う鷹がおれの腸を切り裂くのが明白だった。
「…Aが一言、違うと言ってしまえば新しい小説のネタにでも使うつもりだったんだがな…」
優作さんは困ったように笑って俺の頭を撫でた。この家族を巻き込みたくなくて奔走しようとしていた矢先に優作さんに全てがバレてしまって、おれのちっぽけな脳みそではもうどうしようも無くなった。新一が小さくなっていたから忘れていた。おれは馬鹿なのだ。
『…騙すつもりは雀の涙ほども無かったよ』
「わかっているさ。Aが何歳だろうが君はオレの息子だからな」
『十七歳…って言いたいとこなんだけど本当は何歳だか…俺が今から言うこと、信じられないだろうけど聞いてくれる？ 頭がおかしいって思うなよ』
赤井さんに前に話した時もそんな話し出しだった。赤井さんの時は、それに準ずる根拠があったけど今はそんなものが無いから、信じてもらえるかどうかは五分五分でしかない。しかし、信じて貰えない辛さよりも俺はこの慧眼から逃れることを選んだのだ。
この世界が漫画であった話、兄さんが警察学校を出ると公安に入り、危ない組織に入る話、兄さんに殺される話…その全てを包み隠さず話した。
「…ひとつ良いか？ 君は、所謂異世界転生のようなものを体験したそうだけど…君から見てオレ達はどう見える？ 」
その意図を図りかねて困って、『どういうこと…』と口に出した時、そういえば赤井さんに話した時に同じ質問をされた。と思い出した。
『赤井さんにも同じこと聞かれた。どういう意味なんだ？ 』
「見え方の問題さ。オレ達が二次元的に見えるか、三次元的に見えるか。それに、漫画だったということは作者がいるということ…絵柄があるだろう？ オレたちにその絵柄の面影はあるかい」
『あぁ、そういうこ……と…』
ボタボタと鼻血が垂れているのに気がつく前にまた腰が抜けた。優作さんが慌ててティッシュを取り出して、おれは馴れたように上を向いた。口に血の味が広がって吐き気を感じる。ベランダの柵に持たれかかって夜風に髪がなびいた。
『……思い出せない』
「…何を？ 」
『…漫画の絵柄…。話は思い出せるのに』
夜空には星はおろか、月すらも顔を出していなかった。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
