星に願う話 ページ8
『なぁ、君、落としたよ』
新一の肩に体重をかけて覚束無い足で歩いていたが、女の子がハンカチを落としたので、使い物にならない足で倒れ込んでハンカチをとってやる。
「あっ、おい！ 勝手に動くなって…」
急に体重移動をしたせいで新一も俺の隣に倒れ込んだ。女の子は俺の手からハンカチをひったくった後、走り去ってしまう。
『ちぇ…礼ぐらい言えよな』
「そりゃ…血塗れの人間が急に倒れ込んで自分のハンカチ拾うなんざ嫌だろ」
『…それは言えてる』
もう一度新一に肩を貸してもらうとゆっくりと歩き出した。新一は俺を気遣っているのか揺らさないようにとゆっくり足を動かす。その姿を見て鼻の奥がツンと痛んだ。
きっと俺は、いずれ兄さんか新一を選ばないといけない機会が来た時、新一を見捨ててしまうのだろう。今日だって、兄さんを助けるために新一に危ないことをさせてしまった。二回目だろうがなんだろうが上手くいかないらしい。きっと、またこうして新一を危険に晒すなら俺は新一の傍に居ないのが一番だ。
ポケットの中の携帯の存在感を感じながら新一の肩に回した手に力を入れた。
『きっとさ、お前は俺が逃げろっつっても余計なお世話焼いて道連れになって死ぬだろ？ 』
「藪から棒に失礼だな。何の話だよ」
『別に〜？ 探偵だろ？ 推理してみろよ』
「おうおう、上等じゃねーか。追い詰めて跪かせてやるよ」
『ホォー楽しみだなあ！ それまで生きとかねーと』
ベルモットも組織も頼るつもりはなかったが、俺の居場所は
家につく。有希子さんに抱かれて暖かい体温に包まれる度に兄さんを想った。それは今も例外でなく、その温もりがおれの心を満たす度に有希子さんには何の恐怖も抱いていないことがフラストレーションとなっていた。有希子さんに重ねて降谷零を見ることで少し身体が硬くなった気がして、おれは有希子さんに『ごめんなさい』と、狡賢く有希子さんにその真意を伝えないまま謝った。
新一は飯を食って風呂に入ると疲れて直ぐに眠ってしまったようで、おれはベランダに出てベルモットの電番が入った携帯電話を握りしめた。星の見えない夜空におれの携帯だけが輝いて、いっそこれが星になってしまえばいいのにと密かに願った。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
