松田の話(6) ページ50
『…気づいてたのか』
「まあな。呼び方がちげーし…」
呼び方に差異なんてなかったはずだが、微妙な変化に鋭いマツダは気がついたのだろう。ふと、マツダは刑事の仲間に呼ばれたらしく俺に「わりぃ」と断りを入れるとそちらに走っていってしまった。屋上のベンチに座る。一人になって冷静になって、やはりベルモットの行動が理解できなかった。確かにベルモットがマツダを殺したと、前の世界の俺がそう言っていたが、ベルモットはそれを聞いて「じゃあ」私が殺した。と嫌な認め方をした。…俺がそう言ったと話した赤井さんと景光兄ちゃんを疑う訳では無い。ただ、ベルモットはマツダを殺していないのではないだろうか…。今それを確かめる術はなくなってしまったが_____…
「A、不味いことになった。この爆弾事件の犯人と思わしき男が人質数人と盾籠ってるらしい。…強行犯係とはいえ、一課だから招集された。お前、一人で家に帰れるか？ 」
『ま、まってくれ。俺も行く』
「お前は来るな。爆弾に詳しかろうが所詮ガキはガキだ。帰れ」
事件前まではあやふやだった俺の領分をきちんと線引かれた気分だった。
しかし、マツダを行かせるわけにはいかない。この事件がまだ終わっていないのならば、マツダが死ぬ可能性がまだあるということだ。マツダの袖を掴むと、困ったようにマツダは俺の目線に合わせてしゃがんだ。
「さっきは悪かったな。冗談とはいえ、零を持ち出して…ほら、零に伝えてやるってやつ」
そんなことか。と拍子抜けした途端、俺の手からマツダはするりと抜けて車に乗り込む。しまった。と思った時には車のエンジンをかけていて、走ったところで追いつけなかった。
……もちろん、マツダを死なせるつもりは無い。ポケットから携帯電話を取り出す。登録された電話番号は既に消されていたが、記憶を辿ってその電番を押していく。何コールかした後、妖しく艶やかな声が電話越しに聞こえた。
『頼む。力を貸してくれ』
「それに見合う対価を貰うけど？ 」
『…分かってる』
優作さんがいなくなった途端、コイツの力を頼るのは気が引けた。しかし、今は頼れる人がコイツしか居ない。返事をすると、そのすぐ後に俺の後ろに気配がして、振り返るとベルモットが立っていた。「ようやくその気になってれてありがとう」と嫌味としか思えない言葉まで吐かれて怒りを納めるために唾を飲み込んだ。
『目的地は杯戸町の廃ビルだ。…そこまで連れて行ってくれ』
「あら。慎ましいお願い」
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
