松田の話(4) ページ48
「Aか。萩原の仇がようやく尻尾見せたぜ」
日が差し込むとまだ汗ばむ程の暑さの午前十一時頃、マツダの携帯に連絡を入れると彼は電話越しであろうと歓喜を隠しきれていない。午前十一時ともなると人の動きが盛んで、俺は電話の傍ら、ただ手元のこの大きな爆弾を悟られないようにする為に精一杯だった。
爆弾は萩原の病室の流し台の下に設置されていた。全く悪趣味で、爆弾犯の片割れが死ぬ原因となった俺と萩原を纏めて狙った犯行だったのだろう。
遠隔操作も可能な爆弾であるために、マスコミに知れてしまえばその瞬間に爆発させられてしまう。それを考えると病人やナースがこれを見つけてしまわなくて良かったと安堵の気持ち溜息となって漏れる。
マツダは電話の向こうで「オレも死ぬ気は無いが、万一の時は零に何か伝えてやるよ」と軽快に笑う。
『当ててやろうか。観覧車に爆弾が仕掛けられてるんだろ。しかも水銀レバーの』
マツダは一瞬狼狽えた後、コードを切る音を響かせると「…初めて会った時もそういう奴だったな、そういや」と思い出したように呟いた。
『何も聞かずにどんな文字が液晶パネルに出ても俺を信じて線を切ってくれないか』
「…なるほどな。丁度今出てきたぜ。爆発三秒前に次の爆弾の位置を教えてやるって」
『詳しい話は後でする。今は、俺を信じてくれ』
バチン。と電話越しにまた音が聞こえる。息を飲んでマツダの次の言葉を見守った。
「お前、それで二つ目の爆弾の在処を突き止められなかったらどうなるか分かってるんだろうな」
『ああ…わかってる』
「世間様は爆弾を切ったオレを非難するだろうな」
『…ああ。それもわかってる』
何度かバチリとニッパーがコードを切断する音が電波を伝った後、マツダが肺の中の息を全て吐き出した音がくぐもって伝わった。
「オレの運命をお前に預けた。後、オレはなにをすればいい？ 降谷」
降谷、と呼ばれたことに少し驚いてたじろぐ。
隣の病室からワッと大きな声が響いて、たった今、杯戸町の大観覧車の爆弾の時限装置が止められたことを知る。
『…病院。米花総合病院の萩原の部屋だ。タイマーは残り二時間…マツダは来なくていい。俺が、お前の手になる』
「ホォ。もちろん道具は持ってんだろうな 」
『もちろん』と返事をしようとして、ベルモットに携帯を取られてしまう。咄嗟に取り返そうと手を伸ばすとベルモットは俺の声で「指示を頼むぜ。松田」と言って俺を見下すように笑った。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
