松田の話(3) ページ47
ドラム缶は病室下の物置に隠されていた。女はまだ俺の後ろを着いてくる。
『…なんだよ。俺はお前に助けを求めないしお前のことも助けないぞ』
「あら、そのお前ってベルモットのことかしら」
『シャロンであろうと』
ドラム缶を持ってきた工具箱のノミと釘で上面を開けていく。中身はやはり爆弾だったが、前にマツダに教えてもらったたくさんの種類の爆弾の中でも威力は弱いものだ。
『……マ…マツダはこんな程度の爆弾を爆破させないために死んだって言うのかよ…』
爆弾を学んだからこそわかる威力の知れた構造が、知りたくない真実を俺に見せる。落胆が心底から溢れ出た。
ふとベルモットの鼻で笑う声が聞こえて、咄嗟に俺を嘲笑っているのだろうと心当たりカッと頭に血が昇る。
「やあね。そんな怖い顔で睨まないでちょうだい。ふふ、アナタ、そんな頭悪かった？ 」
『はあ？！ 』
どこまでもこの女は楽しそうに俺を嘲笑う。
「まさか、爆弾がここだけだなんて思わないわよね？ カウボーイ」
『…おいおい…この爆弾自体がフェイクって事かよ』
「四年前の爆弾事件で警察がどうしてまだ犯行声明すら出していない段階で大きな爆弾の在処を突き止めたのか。私達なら調べるわ。そうしてきっと賢いネズミに辿り着くかしら。ああ、確か、あの事件。犯人グループの一人が死んでいたわよね。仇討…かしら？ 」
たかがガキ相手だろう。と苛立ちを募らせるが、苛立ったところで爆弾が見つかる訳でもない。パチリと線を切ってやれば簡単に爆弾は動かなくなってしまった。まだ爆発までの時間はあるので無効化された爆弾を解体すると、簡単な仕組みだが対冷却システムがついており、時限爆弾を液体窒素などで無効化しようとすれば一瞬で周りが吹き飛ぶだろう。こんな爆弾でも人一人程度をこの世界から消し去ってしまうほどの威力はある。
「私を頼るのはどう？ 爆弾なんて簡単に探してあげるけど」
『……兄さんもいなくなったんだ。お前たちと関わる理由は俺にはもう無い』
「あらそう。残念」
新たに爆弾を探しに立つ俺の後ろを、残念。なんて言いつつも着いてくる辺り、俺に対して食いさがれないのっぴきならない事情があるのだろうと推察する。ベルモットよりも俺の方が立場が上なのだ。と自分に言い聞かせながら後ろからの圧に心を押し潰されないよう、小さな骨壷を握り締める。
東の空は明るんでいた。刻一刻とマツダが円卓の騎士に誘われて七十二番目の席に座ってしまう未来が迫っている。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
