後悔 ページ42
「おいおいおいおい…また居やがるじゃねえか…」
『…おっ。マツダ。今日こそ教えてくれ』
寒くて空気も澄んで、都会の地上の星空から少し離れたこのアパートではチラチラと星が瞬いていた。
帰宅しようとしたアパートの前にもう三日も居座っていたのは、親友の弟、降谷Aだ。オレに爆弾処理の方法を聞きに来ていて何日も追い返していた。
萩原をこの世界に引き留め切れなかったオレを責めるように睨む瞳はいつ見ても心臓が粟立つ。…もちろん、コイツはオレを責めたりはしていなかったが、どうもオレの萩原への後悔がアイツの瞳に余計な意味を加えてしまう。
「いいか。お前みたいな一般人に処理任せてるようじゃな、爆処の意味がねーんだよ！ 」
『大切な人間すら守れずに死んでいくようじゃ俺だって生きてる意味ねーんだよ！ 』
胸倉を掴まれて、近くでAと相見える。Aの鼻は赤くなっていて、唇は少し青い。オレの服を掴む手は寒さに震えていた。ゆっくりと冷たくなった手にオレの手を重ねると、『悪ぃ』と悴んだ手の力を弛めた。まだ小さい手先は真っ赤で強く掴んでアパートの鍵を開けて部屋の中に入り、Aが暖房の前でじっと座ってもその手を離さなかった。人生という長い旅路を腕引く者が居なくなった辛さがAに重なって思い出される。彼には、信頼できて支えになれる大人が必要だった。
ふと、握った手から視線を滑らせた厚着の下に内出血の痕が見えてAの服を剥ぎ取る。
『…ま、なんつーか…ガキ共のちょっかいだ。全部倍返しにしてやってるけどな』
怪我は全て転んだからと誤魔化そうとしたAに圧をかけると、Aは渋々と話し始める。
『半分外人だからだよ。虐める奴らに深いわけなんて無いさ。…でも、心底腹は立つが』
零によく似た青い瞳はきっと零を思い描いていた。Aはオレが思うよりずっと強かで、しかしまだ未熟だった。ならば、少し試してやろうと悪い部分が閃く。
「…コレ、爆竹だ。幾つかある。お前を虐めた奴の家に仕掛けろ。それで気も晴れるだろ」
困った顔をしているAに無理矢理爆竹を持たせる。萩原を失ったオレのように復讐に身を任せるようじゃ爆弾解体は教えられない。仮にも友人から未来を預かった子供の将来を閉ざすことはしたくなかった。
だからこれは既に復讐に囚われてしまって犯人を萩原よりも辛い目に合わせてやる事が生きる原動力になってしまったオレの、オレの未来への罪滅ぼしだった。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
