異質な話 ページ38
『ああそのまさかだよ』
兄さんの住んでいたアパートの近所で起こった不審死事件…。昼間はダテにはぐらかされてしまったが、夜間ならばきっと見回りの警察官は居ないはずだ。警察も夜中に子供が事件現場に入るなんて思わないだろうし、きっと簡単に侵入できるだろう。
『気になってんだろ。不審死事件』
___不審死、と聞いてから、胸が驚く程にざわつく。俺の失った記憶の破片がそこに落ちている気がしてならない。きっと、前回もこの事件があったのだろう。そうして、記憶を失った俺の胸に刺されたような痛みを残していく何かが、この事件にはある。
現場への侵入を提案したのは、少しの間とはいえ邪険に扱ってしまった新一へのちょっとした詫びでもあった。犯人が現場に居ない事件現場なら、危険性はないし、部屋さえ荒らさなければ咎められることも無い。新一は目を輝かせるのを抑えて、「行く」と呟いた。
現場は予想通り誰もおらず、俺達は手袋を填め、規制線を潜って事件現場である家の中に歩みを進めた。
玄関を抜け、廊下を渡ってリビングに面する扉を開いた時、ダテの言う「警察の領分」の意味がわかった気がした。
「なんだこれ…」
まるでモデルルームかのように綺麗に整頓されたリビングの、ご飯を食べる机にはまるで先程まで誰かがいたかのようにお茶請けと飲み干されたコップが二つ入っている。異様なほど綺麗な部屋の唯一の生活感から目をそらすようにテレビ横の庭に出る大きな窓の隣の壁に、十字を刻みつけたように両手を広げ、首をダランと垂らせるようにして縁取られた白線と胸の辺りの血の跡がシミを作っていた。
ジクジクと頭が痛む。ダテの言っていることは正しかった。これは"新一が"関わっていいものじゃない。
百舌鳥の早贄のように殺して、その割に証拠は一切残さない。その手口には心当たりがあった。
「コラ！」
大声に思考を無理矢理断ち切られると、自然と頭痛も消えていく。恐る恐る後ろを振り向くとダテが俺たちに目線を合わせてしゃがんでいた。
「な、なんでここに…！」
「ったく。絶対来ると思って見張ってたんだよ」
コツンと俺の頭に拳を当てると、ダテは「二度とやるなよ」と釘を刺した上で窓際の壁の死体を形どった白線に近づく。
「この殺人は見せしめだ。ヤクザか…何か、もっと他の大きな組織か。とにかく管轄が捜一で無くなったといえばわかるだろ。送って行ってやるから、帰ろう」
そう言うと彼は俺たちに大きな手を差し出した。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
