気づかれている話 ページ34
新一はへぇ。と呟いてアルバムの他のページをめくる。『人のガキの頃見て何が楽しいんだか』と心の声を漏らすと、新一は「ガキの頃の方が聡明そうだ」と悪戯に笑う。
『ったく…おめー、大人になるまでにその憎まれ口やめろよな…』
「Aが無茶すんのやめるんだったら辞めてやるよ」
俺は口を噤んだ。まだ最低でも三人分ほど無茶をしなければ行けないから新一の憎まれ口は治らないなと心の中でひとりごつ。
『アルバム、要らないものの方のダンボールに入れといてくれ』
「…持って帰らないのか？ 」
『……兄さんが写ってないのが、なんか嫌だからな』
新一は「そうか」と納得して二冊目のアルバムを捲りながら一冊目をダンボールの中に入れる。アルバムの鈍くて重い音がしんとした部屋の空気をふるわせた。
その後も仕分けは続く。貴重品やリサイクルできるものは持ち帰り、明らかに要らなさそうなものはゴミとして処分する。ゴミが増えてきた頃、新一は不服そうに俺が処分しようとした何枚かの俺の写真を掴んだ。
「…やっぱり一人で来させなくて正解だった」
『はあ？ 』
「さっきから、明らかな思い出の品だとか形見だとかも捨ててるだろ。その写真だってアルバムだってそうだ」
『いや、本当にいらないと思って__』
「いらないんじゃなくて、いるかいらないかすらわからないの間違いだろ」
新一に心を借りているから、そのぐらいの分別はついているはずだ。そう言おうとして遮られる。
「鏡でも見て頭冷やせよ。今のA、気持ちわりーぐらい冷静な顔してるぜ」
『…無理だ。…………今俺の顔を見てしまったら、俺は本当に心が壊れてしまう』
直感だったが、本気でそう思わざるを得ない。兄さんの遺品整理をしようと何も己の心が動かない自分の酷い顔を見て、俺に残った僅かな心はきっと粉々になってしまうだろう。死へのトラウマのせいで、自死できない自分がいた。きっと今ここで首でも掻き切ってしまえば、兄さんの笑顔がもう一度見れるはずなのに。俺は小四で、兄さんは警察学校入校前。いじめられっ子に果敢に応戦した俺の擦り傷に勇気の勲章を貼り付けて悲しい顔で俺に「こんな風に手当をするのは最後だ」なんて呟く兄さんに俺は心を痛めるのだ。
『…遺品整理、続けていいか？ 俺、分からなかったら新一に聞くから…』
「ああ。 いくらでも思い出させてやるよ。お前の気持ち悪いぐらいの零さんへの気持ち」
俺はそれに安堵して、クローゼットに手をかけた。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
