あとは頼んだ ページ4
「長ぇよボウズ！ 逃げてんじゃねーだろうな！ 」
Aと分かれて個室に戻った後、スグに男が入ってきて心臓が波打つ。少しでも遅ければ客の捕まった事務所に犯人が行っていたかもしれない。
「ほら、出たよ。トイレ…」
水を流して扉を開けて、始めて相見える男はバットを持っていて後ろに回して先端を肩に置いていた。
「ボウズ、ちょっと着いてきてくれるか」
男はニヤニヤとオレの前に手を差し出す。複数犯の為、暴れることはしない。あくまで怯えた子供を演じればいい。
「…な、なんでバット持ってんだよ…」
喉を引きつらせて怯えた表情を作る。男は満足そうに笑って「いいから歩け」と俺を脅した。
反抗することなく間抜けに怯えきった顔で男の後を着いていく。要はスプリンクラーを作動させてしまえば良い。しかしこの手のライターは指を離せば火が消えてしまうものだから、商品の消失は免れない。レジ横を通った時、誰も見ていないのを確認してライターをくすねてレジ隣のチップス系のお菓子に火を放つ。「悪ぃな」と心の中で呟いてライターを下に投げて大声で叫んだ。
「うわー！ おっさん、火！ 燃えてる！ 」
「何っ！？ 」
油分を多く含むチップスは簡単に延焼する。犯人達が違和感に気がついたようで数人が「なんだ！？ 」とレジ隣に集まった。スプリンクラーが作動し、店内に水が溢れる。時間稼ぎが一番の目的だが、Aはオレが隙を見て逃げて警察を呼ぶことを期待している。それならば、と上からの水にてんてこ舞いになる男たちの隙間を縫うようには駆け出した。今のAならば強盗犯の手から逃れることは出来なかっただろう。すぐに助け出してやるからな、と決意を新たにする。後ろで男がショットガンをセットする音が聞こえて咄嗟に店外から出て書棚に隠れて見えないガラス戸の後ろに身を隠した。
さすがに犯人にも「ガラスを割ってしまえば異常性が周りの人間に気が付かれる」ことを理解する理性は残しているだろう。自動ドアからワンテンポ遅れて現れたのはバットを持つ男だった。アスファルトを切るように駆けて、人通の疎らな大通りの車の前に飛び出す。車はブレーキとハンドルを切ってオレとの衝突をすんでで回避した。
「おいガキ！ 気をつけろ！ 」
「アハハ、ごめんなさい〜」
横目でコンビニにを見遣ると追っ手はもういなかった。既に出発しようとしたドライバーを呼び止めて「警察まで連れてって」と車に乗り込む。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
