生死不明 ページ12
「…その服は僕の服だよ」
景が「まさか」と呟いた。
警察学校の寮には門限までに辿り着けないことを悟って、僕達は夜道を歩いた。新月だと言うのに星一つ見えない都会の空は僕の不安をそのまま表しているようで生ぬるい風が頬を撫でる。
「…悪い、僕は戻る。お前たちだけでも帰っててくれ。弟が怪我をしているかもしれないんだ」
「おい待て、怪我？ 怪我ってどういうことだ」
踵を返す僕の肩を伊達が掴んだ。他の奴らもとても聞きたそうな顔をしているのを見て、訳を話さないと着いてくる勢いの彼らに観念する。
「さっき、天井裏に続く天井蓋に血漿が増えて黄みがかった血が滲んでるのが見えたんだが、天井蓋を開く前にあの少年に声をかけられてしまって…」
「おいおい…血漿が増えてるって…それ…つまり大量出血してるってことじゃねえか！ 」
松田が叫ぶ。僕が何も答えないのを見て「まじかよ…」と彼は小さく唸った。曲がり形にも出会ったことのある子供の危機を看過できないのだろう。その目は今にも「着いていく」と言わんばかりの熱を込めて僕を見つめていた。
「景、萩原、松田を連れて帰ってくれ。伊達班長、すまない。僕の勝手で罰が増えてしまう…」
「…気にするな。教官には罰は降谷だけにしてくれって頼み込んでやるから」
僕の背中を押して伊達は快活に笑った。後ろを振り向かずに走る。
走って走って規制線が張られたコンビニが闇夜に浮かんでいるのを見た時、息が乱れるように大きく漏れた。捜査をする警官の静止も聞かずに事務所の天井蓋の隙間に滲んだ血を見つけて、椅子をその下に運んで先程は出来なかった天井蓋を外した。
「…いない」
既に屋根裏部屋には何もなかったものの、ある一点…ダクトの前と、この事務所上の天井蓋に出来ていた血溜まりはとても小さな子供が流してしまえば命に関わるような量だった。
「君！ 勝手に入ってきて…！ 」
刑事のような男が僕の足を掴んで引きずり下ろそうとする。「すみません」と一言謝って椅子から足をおろした。
「…子供、子供を見ませんでしたか？ 背はこのぐらいで…黒い髪で白っぽい肌で外国人のような青い目をしていて…酷い怪我をしていたようなのできっと服を血で汚していたと思うんですが」
「…君、強盗犯に拘束されてたうちの一人じゃないか。警察学校の子だろう。早く帰らないと門限が…」
「門限なんてどうでもいい！ その少年をみてないですか！？ 」
胸倉を掴みたくなるのを堪えて叫んだ。
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ちゅんこ(プロフ) - ノルゼリイさん» ヤッター！めちゃくちゃうれしいです！コメントありがとうございます！好きです！励みになります！ (2021年4月30日 12時) (
レス) id: 63782632c9 (このIDを非表示/違反報告)
ノルゼリイ(プロフ) - 何日間かかけて前作から読破してしまいました！ とても面白いです。あ、主人公が、また黒の組織にと目をつぶりそうになってしまった時の救世主の優作さん、、尊い。 これからも物語楽しみにしてます。 (2021年4月29日 16時) (レス) id: 8f5d447aaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんこ | 作成日時：2021年4月24日 20時
