良い話 ページ4
『___って、カッコつけてもよ、結局美女の腕の中で死にたいのはおめーも同じだよな』
「何の話だよ…っあー!クソっ、おめー卑怯だぞ!そうやって俺の注意を逸らして勝ちに行く算段かよ…!」
新一はゲームのコントローラーを置いて俺の頭を叩く。
『ってーな…俺が新一に勝てるとこなんて喧嘩かゲームぐらいなんだから勝たせろよな…』
「ったく…負けそうだったからって変な話して逸らしやがって…」
兄さんと話したあの時から一ヶ月ほどが経った。俺は新一の家に引き取られて、新一と兄弟のように過ごしている。…工藤夫妻が良い人で、俺がいくら遠慮を知らない性格だったとしても流石に、数日は借りてきた猫のように俺は大人しい。そんな俺の緊張を解きほぐしたのが、優作さんだった。
「不安かい。君のお兄さんと離れて」
俺がこの家に来てから数日ろくに眠れていないのに気がついて優作さんは俺を書斎に呼んだ。
『…どっちかと言うと、新たな環境に馴染めないっつーか…有希子さんも新一も…アンタも良い人なのは分かるんすけど』
目を逸らして呟いた。そんな俺を見て、優作さんは小さな俺の体を抱き上げる。
「ハハハ。きっぱり物をいう子だ。なかなかお兄さんによく似ている」
『兄さんに?そうか…じゃなくて、そうですか? 』
「いいんだ。敬語は使わなくて…これから家族になっていくんだから。似ているよ。君を引き取る時もかなり強く、君が少しでもこの家に合わないと僕が判断した場合、僕はAを迎えに行きますので。と牽制されてしまってね…」
優作さんは困ったというふうに頭をかいた。俺はむず痒い心地になって声が出なかった。
「あー!優作ったら、もうAちゃんと仲良くなってるじゃない!」
書斎に珈琲を持って入った有希子さんが、優作さんの座る机に珈琲を置くと、優作さんに抱えられた俺の頭を撫でた。
「…有希子もオレも、君を悪くはしない。少しの間だろうが、オレ達を親だと思ってくれ」
「そうよぉ。Aちゃん、女の子みたいに可愛いんだからいっぱいお洋服買ってぇ」
「有希子…そんなことすればA君が萎縮するだろう…」
優作さんが小さく笑って制止する。俺はその妙にバランスのいい夫婦を見て凍った心も溶けた気がして、根拠も無く今ならいくら兄さんに触れても平気な気がした。
『…ありがとうございま…ううん、ありがとう』
俺が言い直すと優作さんは俺を地面に下ろした。俺は気持ちが軽くなって新一のいる寝室に走って向かった。
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作者名:ちゅんこ | 作成日時:2021年4月2日 22時