滓の謎の話 ページ27
「オレにも聞かせてもらおうか。どうもAには事情があるとは思っていたが…これは君宛ての物のようだがどうして十七歳になっているんだ? 」
『な、なんで起きてんだよ…まだ夜の三時半だぞ…! 』
「…生憎オレは締切間近でな。 最近はずっとこの時間まで起きている。…するとどうだ。君達がコソコソと降りていくから盗み聞きをしてたんだよ」
あまりにもサラリと俺たちの計画がバレていたことを明かすので、俺たちは面食らって顔を見合せた。
『し、新一ぃ…』
「…オレは父さん側だぞ、A」
「ハハハ。明日も学校があるというのに夜中にベッドを抜け出してオレのパソコンを弄っていたことに関しては、もちろん、新一にもAにも後できっちりと反省してもらうけどな」
「と、父さん…」
俺の助けを求めた手を無慈悲に踏みにじった新一は優作さんに一蹴されてそれを笑って誤魔化す。報いを受けろと俺は心の中で新一に悪態をつくが、やはり状況が悪いことには変わりがない。工藤家というのは好奇心の家計なのだろうか。良く似た親子の目は俺という謎の宝庫を狙ってギラギラと嫌に輝いていた。
『わーった…言やぁいいんだろ…全部よ〜…その代わり俺のこと頭がおかしいやつみたいに扱ったら、俺あ兄さんとこに帰るからな。一人で生きてやるからな』
「いや、全部言わなくても既に推理できる材料は揃っているから言いたくなければ言わなくても」
『優作さんまで新一みてーなこと言うのかよ…』
言いたくない訳では無い。将来的に大成する探偵の頭脳とどんな難事件だろうが新聞を読むだけで解決してしまう推理小説家の頭脳を借りれるのならば、むしろ言わない手は無い。しかし、俺の身に降りかかったファンタジーを工藤親子が信じてくれるかと問われると俺は口を噤む他なかった。前の世界の赤井さんが俺の言うことを信じたのは、それを信じるに値する、俺の実績があったからだ。今の世界では俺はそういう未来予知みたいなのはしたことがないし、世情には疎いので『明日○○の株価が暴落する』だとか『今の大統領選で勝つのは○○だ』みたいな予言をすることが出来ない。要するにすぐさま照明ができる根拠がないのだ。俺がウンウンと唸っていると、優作さんは俺から何も聞き出せないことを悟ったのか、USBに入ったもうひとつのテキストファイルを開いていた。新一もそれを食い入るように見つめている。
「…酒の名前? 」
新一が呟いた事で俺は二人がそれを見ているのに気がついた。
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作者名:ちゅんこ | 作成日時:2021年4月2日 22時