時を閉じ込めた話 ページ24
『クソッ…礼をさせろとは頼んだが全員ハーゲンタッツは馬鹿だろうがよ…バイトもこの歳じゃ出来ねーし俺ぁ終わりだ。何がUSB代だ。高すぎる…』
「もっと静かにしろよ…父さんにバレたくないっつったのはおめーなんだからよ」
時計は午前三時を指していて、俺たちはなるべく音を立てないように書斎にあるパソコンを起動する。暗い部屋の本棚をパソコンの光が照らした。本当は何が書いてあるか分からないUSBの中身を新一に見られるのはかなりマズイ。だが、パソコンのパスワードを俺は知らないし、新一はこのUSBがなんなのかずっと気になっていたようで帰ってきてからずっとソワソワしていた…。それに、前の世界で新一に隠し事をしないと誓ったばかりだった。俺は新一の好奇心に簡単に折れたのだ。
『…問題はこのパソコンがtypeCに対応しているかってとこなんだけど…平気だな』
「で? いい加減答えてもらうぜ。どうしておめーのお兄さんはあんな面倒な場所にUSBをいれたんだ」
『それがわかれば苦労しねーんだけどなあ』と呟く。USBを繋ぐと画面に"勉強"と言う名前の、強いていえば見覚えのあるファイルが現れた。
「…どうした?なんでクリックしないんだ」
新一は俺が動きを止めたことを不審に思って俺の腕を払い除けてタッチパッドを操作し始めた。
『おいバカ! やめろ! そのファイル開いたら殺す! 』
「そう言われると開きたくなっちまう」
『あ、あ、ああああ!』
指先がカチリと心地よい音を鳴らすのを俺は止められない。一瞬パソコンを壊してしまおうかとも考えたが、優作さんのものだということを思い出して俺は立ち竦むことしか出来なかった。少しのロード時間も無く、ウィンドウが開かれる。俺は咄嗟に新一の目を覆った。この、見覚えのある、勉強フォルダは…俺が前の世界でせっせと集めたアダルティでボンキュッボンな女の裸が___
『な、無い…』
「っおい! みえねーじゃねえか! 何すんだよ! 』
新一が俺の手を振り払う前に俺の両手はパソコンを操作していた。フォルダには俺の努力の結晶は無く、代わりにテキストデータが二つ眠っているだけだった。
「…こっちの方、《Aへ》ってファイル名だぞ」
前の世界の兄貴が示唆した場所に埋め込まれていたUSBデータ、そしてデータの中身は前の世界の俺のパソコンのフォルダ…。このUSBが俺の記憶と同じく時空遡行しているのなら、これは前の世界の兄さんが書いた______
140人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちゅんこ | 作成日時:2021年4月2日 22時