目が覚めたら降谷零の弟になっていた話3 (ページ23)

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見つけた話ページ23

「…その桜の木の下ってなんかの暗号じゃねーのか？」

結局、俺たちはタイムカプセルを埋める時間中に"何か"を見つけられずに、放課後に桜の木の下でスコップを握っていた。

『じゃ～新一、解いてみろよ…俺ぁわかんね～』
「人任せにするな！」

新一は俺の頭を叩くと違う桜の木の下に戻って行った。
他の桜も掘りつつ、タイムカプセルを埋めた桜の下を探しているが釣果は無い。俺は煩わしくなって柔くなった土の上に寝そべった。鋭さを失った橙の光矢が木陰の隙間から俺を刺す。

『桜…サクラ…さくらのきのした……さくらのきのした…桜軒ってなんだよ…ダメだ！俺、暗号とか苦手なんだ』
「はっ…大将がこんなんじゃ見つからないわね」

頭を抱える俺を馬鹿にしたように泥だらけの園子が小突く。悪いとも思いつつ、馬鹿にされた事に腹を立てて俺は『なんだと？』とガンを飛ばす。

「だってねえ、それ、一言も土をほれなんて言われてないじゃない。タイムカプセルに引っ張られ過ぎよ」
『あ～？木の下には何もねーし掘るしかねえだろーが。つーか…こういうのは掘るって相場が決まってるというか…』
「だいぶ前だけど、置き物と同じ色のペンキを紙に塗って見つかりにくくした暗号があったよ？ねえ、新一」
「…おう。下の方にあるんじゃねーの？もしかしたら」

そんなわけあるものか。大体、貼り付ける場所が木ならばペンキを塗ってしまったぐらいで違和感を隠せるはずがない。俺は桜の木の根元を呆れながら探る。

『ほら、何もねー…』

指先が何かにあたって、何かが柔い地面に落ちる。そちらを見やると、掌ほどの木片が俺の手に当たって落ちたことに気が付いた。桜の木を見ると、子供の掌ほどの大きさの穴の中にUSBメモリのようなものが埋まっていた。

『………わりぃ。あったわ』

俺が呟くと、呆れたように新一と蘭と園子はため息をついて「帰ろうか」と座り込んだ俺に手を差し出した。俺はこのUSBメモリに見覚えがあった。兄さんがよく使っていたタイプシーの安価なエリコム製のUSBメモリだ。キャップを外すと予想通り、シンプルなプラグが夕焼けを反射しきらなかった。

帰り道、三人にコンビニでアイスを奢らせろと頼みこむ。蘭は遠慮してガルガルくんを買おうとしていたが俺がぶっきらぼうに高価なアイスを手に握らせると、新一と園子もそのアイスをレジに運んだ。お陰で財布の中は冷凍庫に匹敵するほどに寒くなったが、USB代と思えば安いものだと俺は白む空を見た。