慰めの話 ページ18
兄さんに俺の隠し事の片棒を担がせてしまい、俺はあれから一晩経とうが蛆虫のように蹲って白いベッドに影を落としていた。
「ったく…何をそんなに落ち込んでんだよ」
『兄弟がいねーおめーにはわかんねえよ…』
新一は「兄弟がいようとわからねーと思うけど…」と呟いて俺のベッドの足元に座った。小さく沈んだベッドに俺の右足が少し滑る。
『俺ぁもうダメだ。贖いとかなんだとか言っときながら兄さんに貸しを作るだけで…』
「ウジウジすんなよ…めんどくせーな…」
悪態をつきながらもなんだかんだで俺の傍で話を聞いてくれるのは、彼なりの慰めのつもりなのだろう。不器用だなあと思って俺は新一に『うるせー』と小さく返した。
『…つーか…仮にも病人の足元にランドセルを置くなよ…俺が足も骨折してたらどうすんだ』
「骨折してねーからいいじゃねえか。ほら、これ今日の宿題…」
『んなもん渡すなよな〜! 』
「ったくよ〜。おめーが提出物を提出しないからって怒られんのは俺なんだから…」
可哀想に。きっと、俺と幼なじみで今は俺が新一の家に居候しているから先生に一纏めにされているのだろう。
『まっ、俺は俺が怒られなかったら良いっつーか』
「A "も" 怒られんだよ…! 」
新一がプリントで俺を殴る。それなりに痛みを感じて頭を抑えると、下に落ちた可愛らしい文字で縁取られたプリントが目に入った。
『…タイムカプセルゥ? 』
「あぁ、二分の一成人式の日に埋めるって話聞いてなかったか? それの案内だよ」
二分の一成人式…なんだかそんなのがあった気がする…記憶の片隅を探り、昔そういえばタイムカプセルを埋めたなあと懐って口角が上がった。
『んな、タイムカプセルなんざ掘り起こさねえって…ハタチになったら全員忘れてるよ』
「おめーは思い出をなんだと思ってんだ」
『…新一は何埋めるか決めたのか? 』
「……」
新一は黙ってしまって、俺のいる場所からは新一の顔も見えないので彼が本当に何を思っているのか理解しかねたが、直感的に『蘭絡みかあ』と声に出していた。
「バッ……バーロ!!んなわけねーだろ…!」
『はは〜…蘭もこんな男やめて俺にすりゃいいのになあ』
「……それは、ダメだ」
可愛らしく頬を染める新一を見て俺の悪戯心は膨れ上がる。だが、これ以上新一に突っかかると絶対に殴りあってしまうので大人な俺は自制心を保つ為に咳払いをした。
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作者名:ちゅんこ | 作成日時:2021年4月2日 22時