目が覚めたら降谷零の弟になっていた話3 (ページ14)

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連れ去られる話ページ14

『んな事できる犯人は、花野しかいねえ！…と言いたいところだが、警察の事情聴取でブラインドを取り替えたからブラインドが今事務所にないと話した蜷川牧乃さん……あんただけなんだよ』
「…証拠品も女子トイレの掃除用具入れにあったしな…」

新一が俺に哀れみの目を向けた。おめーが支持したんだろうがと怒りの言葉を飲み込んで俺はトドメを刺すように口を開く。

いや、口を開こうとした。

「…っ！どきなさい！この子がどうなってもいいの！？」

蜷川牧乃は警察を振り払って俺の小さな体躯を抱えて柔い首の皮にナイフを突き立てる。花野を見るものの、花野は蜷川さんが人を殺して、また無垢な命を犠牲に己の魂を地獄に突き落とそうとしているのが余程のショックで声も出ないらしい。優作さんは下手に犯人を刺激するといけないと動きを止め気を伺っている。ほかの警察官も同じだった。

『お、おい、蜷川さん…』
「黙りなさい！この子はこのまま人質として連れていくわ！私を追いかけたらこの子の命は無いと思いなさい！」
『…参ったな…』

蜷川さんの柔らかな胸が俺の背中にかなり触れ合っていて、正直、死の恐怖よりも性の目覚めが勝って俺は頭に血が上るのを感じる。

俺の首の皮を少しだけナイフで傷つけた蜷川さんはそのままビルから抜け出した。

『…ビルから出たらナイフは隠しといた方がいーぜ。俺はアンタの息子を装ってやるからよ』
「……何を企んでいるつもり」

蜷川さんは俺を睨む。胸を当ててもらった礼だが…とは言えず曖昧に笑って濁した。

『なあ、なんで殺したんだ？』
「……竹口は私の弟を自決においやったのよ。私は竹口と付き合っていて、家族ぐるみで仲が良かったのだけれど…彼の気持ちはぜんぶウソ。彼、悪徳な金貸しをしててね…」
『ふーん。復讐終えたならもう自首すりゃ良いじゃん』
「……ダメよ…。私も竹口を愛して弟の言うことを信じなかったもの…。出所すれば罪を償ったことになるなんて私には耐えられない」
『死んだら弟に会えるもんな』

俺は兄さんの顔を思い浮かべて呟く。

「…ええ」
『で、ごめんなさいって言って弟に慰めてもらってハッピーエンドかあ。よく出来てんなあ。でも俺はそれで兄さんに触れなくなっちまったから、考え直した方がいいぜ？もう一回の人生が贖いの期間になる』
「…え？」

蜷川さんが聞き直したことで、俺は真面目に答えてしまっていたことに気がついて、『あ！いや、何もねー…！』と慌てて濁した。