阿吽の話 ページ13
『ロッカーは鉄製で、熱伝導率が高めだから、冷やすことも熱すことも簡単だ。つまり犯人はカレー屋…おっと、これはまだ言っちゃダメなんだっけ。犯人は優作さんが編集社に来る前に竹口さんを殺して、遺体と氷をロッカーの中に入れて、優作さんが待っている間にロッカーの温度を上げて死亡推定時刻をずらしたんだ』
「そう。そのせいで湿気が発生してロッカーに隠れたAはいつもよりも髪の毛がクルクルしてるし…」
『ええ!?ほんとか!?……お…俺の兄さん譲りのサラサラヘアーが……』
俺は驚いて窓の近くに走って髪型を確認すると確かに毛先がはねていて少し落ち込む。新一はそんな俺を見て呆れたように笑った。
「…ま、血が乾いていないのも湿気のせいって訳です」
「しかし、血が乾いていないのなら尚更、どうやって遺体を運んだんだ?まさか、魔法で浮かしたなんて言わないよな」
山科刑事は真剣に俺たちを一人の人間として扱っているようで、鋭く皮肉を飛ばした。
『そのまさかだよ』
「…翼が生えた…そう表現するのが最もでしょうか」
新一は優作さんを横目で見て笑って言った。
「まず、天井に注目してください。この天井は配管が白で塗られているが、基本剥き出しです」
新一が天井を指さす。全員が天を仰ぎ、俺はそれを見て自分が指図したわけでないのに胸がドクンと波打った。新一が天性のカリスマだと改めて気付かされたのだ。
『…ここに、ひとつぐらいレールが混ざってもわかんねーよな』
「おそらく犯人は、事件がこのビルのこのオフィスで起こった為に、このオフィス、優作さんがいた部屋、そして花野さんと蜷川さんが使ったカレー屋以外を調べないと高を括ってこんな大胆な犯行に出たんでしょう」
新一は警官が脚立を取り出し、後付けされた白塗りのレールを見つけるのを見つめながら淡々と話した。
『犯人は、そのレールに紐と布で遺体を吊るして運んだんだ。…床を見てみろ。ちっちぇー血が点々とレールに沿って着いてるぜ?』
「…オフィスのブラインドがトイレの掃除用具入れにありましたよ。…ただし、血に塗れたブラインドが…」
"前"の世界でも俺がさんざん憧れた探偵の新一が口の端をつり上げる。俺はこんなすげーやつと推理しているのか。胸の高鳴りが止まらない。俺が惚けた顔で新一を見ていると、新一は俺の足を蹴って催促する。こいつは俺に犯人を言えと言うのだ。俺は良い友達を持ったなあと心底感心して口を開く。
『んな事できる犯人ってよ〜…』
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作者名:ちゅんこ | 作成日時:2021年4月2日 22時