男装パンダは恋を進めたい【沖田総悟】4

183、嫉妬心 ページ36

「斬られなかっただけありがたく思いなせェ」

そう言った隊長は男達から回収したおもちゃの刀をいじりながら、それで、と声をかけた。

「女に頼まれたって、どんな女でしたィ？」
「す、すごく美人な人だったよな」
「うん。すげー美人だった」
「金払いも良かったよな」
「おもちゃ持ってこの雪の中歩くの辛かったけど、それでも十分すぎるくらいだよな」

「何かワケは言っていたか？」

私の問いに男達は顔を見合わせた後、首を振った。

「わからないです。ただやって欲しいとしか」
「そんな怪しい依頼よく受けようと思ったな……」

おもちゃを持って彷徨く、なんて妙な依頼…。

「…まあ、今回は見逃してやらァ。次はないと思え」

ブンと刀を一振りすると、男達の縄が切れた。
どうやら隊長はこの男達を見逃すことにしたらしい。
刀を向けられたことに怯えた男達は、謝罪をしながら一目散に逃げていった。

「……酷い目に合ったッス………」
「あー、大丈夫だったか、加藤……」
「大丈夫じゃないッスよ！なんで止めてくれなかったッスか？！」
「す、すまん……」

まさか加藤まで捕まってるなんて思わなかったんだよ…。

「Aを押し倒した罪は重いですぜ…」
「あれは押し倒したんじゃなくて転んだだけッス！」
「触っただけでも重罪でさァ」
「なんとかしてくださいッス副隊長！」
「そ、そんなこと言われても……。総悟、こんな事故程度で一々目くじら立てなくても」
「じゃあAは俺が知らない野郎に押し倒されてても何も思わないんで？」

そう言われて、思わず想像してしまった。
……す、すごく嫌だ。

思わず眉が下がってしまって、隊長はニヤリと笑みを浮かべた。

「だろ？」
「……ごめん加藤、なんか庇えなくなってしまった」
「このバカップル！！！」
「バカップ……、何を言ってるんだ？！」

私はそんなんじゃない！
全く、何を言い出すかと思えば…っ！

「そんなことより、どうしやす？その妙な女が気になりやすがねェ」

急な話題転換だが、これ以上変な話をしていても仕方がない。
妙な女というのは、先程の男達の話に出ていた女性のことだろう。
確かに気になる事ではあるが……男達の話からはの情報ではちょっと少なすぎる。

「……まあこの雪の中じゃこっちの身も危ないですし、これは陽動の可能性があります。出来れば屯所に戻って副長達と話し合いをしたいところですね」
「…それもそうだなァ」

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