男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

110、怒っている理由 ページ12

「…その男は今日の朝のメールの相手ですかィ」

エンジン音が鳴る車内で隊長の声が隣から聞こえた。
その言葉に頷いて、そうです、と小さく答える。

「趣味仲間っつったろーが」
「趣味仲間ですよ」

それは嘘ではない。
嘘ではないのだけれども……、隊長が凄く怖い。
な、何故そんなに怒っているのでしょうか…？？

「趣味仲間から告白されたってわけかィ。なんで…、なんですぐ断らなかったんで？」

それにはすぐに答える事ができなかった。

曙から返事はすぐじゃなくてもいいとは言われたという事もあるけど…。
一番の理由は隊長を諦めて曙を好きになれたらいいな、なんて思っていたからだ。
そんなずるい気持ちでずるずると返事をしていなかった。

「……好きになれたら、いいなって。…そう思いまして」

そうしたらきっとこんなに悩まずに済むのだろうって甘い考えでいた。
曙にとても失礼な事していたのは私の方だったなあ。

赤信号で車を停止させた瞬間、左腕を掴まれて視線が隊長に向かう。

……見たことないくらい、怖い顔をしている隊長が目に映ってひゅっと息が詰まった。

「…パンダ、お前本当にふざけてんのか」
「っ、た、隊長…、何を、」

物凄い力でつかまれていて痛みで顔が歪んだ。
何をそんな怒ってるんだ…？！

「その男を好きになれたらいい…？ふざけんじゃねぇっ！」
「隊長…、い、痛い…っ」
「テメェの心は何処にある！？同じ男だったら俺でもいいだろうが！！」

そう言った隊長は、ハッと表情を変えて手を離した。
…俺でもいいだろって、どういう…。

「青、ですぜ」
「…はい」


車を走らせて、無言の中病院に辿り着く。

…隊長は、何故こんなに。

「…断るか断らねぇかは好きにしなせェ」
「隊ちょ、」
「俺ァお前が何考えてるのかよくわかんねぇよ……」
「……オレにも、隊長が何考えてるのかよく、分からないです」

けど、このままはまずい気がする。
隊長が、遠くなってしまうような。

「でも、あの…ちゃんと話し合いしませんか。
曙にはきちんと断りを入れてきます。…結局、趣味仲間としか見る事が出来ていなかったので」

このまま変な空気のまま隊長と距離を置くのは、凄く嫌だった。
こちらを見ようともしない隊長に、小さく謝罪をする。

「隊長…オレには隊長が何故怒っているのか理解できないんです…、すみません」

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