201、兄と恋人（別視点） ページ6
ずっと心の中にあった棘がようやく取れた様な気がした。
全部全部、辛くて苦しくて、心の奥深くにしまって鍵をかけていた。
「A、大きく、なったなぁ」
「歳兄さんは相変わらずだね」
「Aの…兄…？！」
沖田は目を細め、そっとAの肩を寄せた。
この男は、Aの兄だった。
元の世界の。
「ねぇ、A…元の世界、帰りたいよね？」
その言葉に、Aは息を飲んだ。
強い潮風が吹き、男の被っていたフードが落ちる。
Aと面影が似た男の風体が露わになった。
「なに、言ってやがる。元の世界って…、一体、」
「帰る方法、見つけたんだ。可愛い子いっぱい。生き血をあげれば帰してくれる。
一緒に、帰ろう？」
(よくわかんねぇがAに近付けたらまずいっ！)
ジリジリと寄ってくる歳から庇うように沖田はAを自らへと寄せるが、A自身がそれを拒否した。
(…話し合いたい、って事か。仕方ねぇ…)
「歳兄さん…バカ、でしょ」
「帰って…そしたら、由佳とまた、」
「由佳は死んだんだよ、歳兄さん」
「違う、死んで無い」
「死んだよ」
「死んでない」
「思い出して、由佳は、」
「死んでない！！」
Aに向かって歳は手を伸ばした。
それを沖田は払い、少し距離を開ける。
「死んでない！死んでない！！」
「と、し…にいさ…」
「由佳は生きてる！オレを待ってる！結婚するって約束した！」
「……」
「由佳は、由佳、は…」
歳は既に狂っている。
由佳が、彼の婚約者だった女性を亡くしてから、ずっと。
「由佳は、私が殺したんだよ。歳兄さん…」
「…違う」
「だから、歳兄さんは私に…。私を…」
「A、その男、殺してもいい？」
先に刃を向けたのは歳だった。
慌ててAを突き飛ばすと、歳が振るった小刀を受け止める。
「や、やめて兄さん！お願い！」
「A！下がってろ！」
歳は、急に姿を消したり、現したりしながら、少しずつ、少しずつ沖田へ傷を付けていった。
Aは叫ぶ。
やめて。だれかとめて。
沖田は防戦一方だった。
無理もない。相手は自身が愛した女の兄、家族なのだから。
斬れるわけがなかった。
…失った自身の姉を、どうしても思い出してしまうから。
少しずつ傷ついていく沖田に、Aはほろりと涙を流した。
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つむ(^p^)**(プロフ) - 思わずキュンとしてしまう場面が多々あり、沖田の純愛ぶりにはとても胸が熱くなりました。本当に大好きです。長文失礼しました。これから先もずっと見返して、また感動したいと思います！ (2022年1月11日 1時) (
レス) id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
つむ(^p^)**(プロフ) - 2年越しとか笑えないくらい経ってからのコメント失礼します。夢主ちゃんの芯の強さにも心惹かれるものがあったし、作中で出てくる女の子たちもみんな根が優しくて夢小説という括りを超えて純粋に感動出来た作品でした。夢主ちゃんと沖田にはこちらも (2022年1月11日 1時) (レス) @page19 id: 7bdd5c1516 (このIDを非表示/違反報告)
からし(プロフ) - 瑞稀さん» ここまで読んで頂き有難う御座います！面白いと言って頂けてとても嬉しいです^_^ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 926dbf1062 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - めちゃめちゃ面白かったです…！！！一気読みしてしまいました笑 完結おめでとうございます！ (2020年4月16日 21時) (レス) id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からし | 作成日時：2020年4月6日 23時
