くすり(紫) (ページ35)

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しばらくしたらふっかの調子も戻ってきたのかいつもみたいに楽しく回って。

『そろそろ花火のとこ移動する？』

時間もいい頃だしって花火会場に向かおうとすれば何故か止められて。

「あ、まって。穴場スポット見つけたから今年はそっちで見ない？…ちょっと花火から遠くなっちゃうかもだけど人は全然いないから！」

『え、人多くても花火近い方が…』

「いいから！そうしよ！ね？」

私の言葉を遮ってまで何故かそっちに誘導されて。

ほんとは出来るだけ近くで見たいんだけどまあいっか。

花火ってちょっと離れてても迫力すごいしね。

そうして連れてこられたところは確かに全然人がいなくて。

「時間もいい感じだね」

『うん、そろそろかな？』

数分待つと打ち上がり始める花火。

1年ぶりの花火はやっぱり大きくて壮大で、綺麗で。

『きれい……』

「ふは、去年とおんなじ反応してる」

『え、そうだっけ』

自分が何言ったかは覚えてないけど花火に照らされたふっかは相変わらずかっこいい。

いや、去年より更にかっこよくなったかも。

明るく染めた茶髪、耳に空いたピアス。去年とは違うところだ。

優しく笑うその顔は去年も今年もやっぱり好き。

最後にスターマインがあって連続で打ち上げられると、花火も終わった。

『…おわっちゃった』

今年の夏祭りも終わりかあ。

結局同じ夏しか過ごせなかったなあ。

…なんて思ってたのは私だけだったみたい。

じゃあ帰ろっかって立ち去ろうとする私の腕をグッと引っ張って、

「まって」

って引き止めて。

「あのさ、言いたいことがあって」

その真剣な顔は期待してもいいの？