くすり(紫) (ページ13)

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あの後何事もなく花火も終わって家に帰って。

ふっかは家まで送ってくれたからもう一度言おうと思えば言えたのかもしれないけど、そんな勇気はまったく出なかった。

後日事の顛末を話したら愛美には呆れられたけど、告白って1度遮られるだけでもうメンタルやられるんだよ。

まあでも元々あの日は別に告白するつもりで行ったわけじゃないし、また機会あるよねって思ってるうちに、夏休みも終わって新学期。

担任が

「休みがあった分新鮮だからいいよな！」

なんてよくわからない自論をかましたおかげで、席替えはまた行われず。

そんなわけで今日もまたふっかと前後です。

「なーあ、進路希望調査書いた？」

『一応…まあ書いたよ、もう9月だしみんな決まってるでしょ大体』

うちのクラスはほとんどが指定校とかAOとかで、大学進学はするものの受験といったピリピリ感は全然ない。

だから3年生にも関わらず夏祭りに行ったりお気楽にしてたわけだけど。

『ふっか大学どこ行くの？』

「いやそれがさあ、こことこことで迷ってるのよ」

そう言ってペラリと見せられた紙に書いてある大学のうちの1つは、私の第1希望と同じで。

『あ、ここ私の第1希望だ』

「え、そうなの？じゃあ俺もここ第1希望にしよ〜」

そういってその大学をあっさり第1希望の欄に書くから、私もさすがにびっくりして。

『いやいや！そんな軽くていいの！？大事だよ大学』

「まあ元々ここかここかのどっちかで悩んでたから、この2つだったらどっちでもいいんだよね」

なんてまた軽く返される。

「それに、やっぱりAと一緒の方が楽しいじゃん？俺Aと同じとこ行きたい」

ってさらにまた軽い調子でサラッと爆弾を落とされる。

いや、ほんとなんなのこの人、無意識なの？

え、怖い怖い。無理無理無理。

思わず顔に熱が集まる私にも気づかない感じで、じゃあ出してこよ〜なんて言ってそのまま先生の方に向かっていくふっか。

『なんなのほんと…』

でも本音は嬉しいだなんて、めちゃめちゃ安心してるだなんて言えない。

絶対この大学入ろ。

…まあ、指定校だから多分大丈夫なんだけど。