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心做しか頭が覚醒してきた頃、俺は再び車を走らせ彼女の元へと迎えに行く。先程までぐっすり眠っていたせいか、朝よりも頭がよく機能している気がする。例のボスの命令で、Aの携帯には盗聴器、及びGPSの付いた特殊機能が埋め込まれていた。まあどこかから買収してきたものなのだろうけれど、彼の過保護っぷりが妙に腹立たしく、自分の脳を強く刺激する。
ちらりと仕事用の携帯に目をやり、彼女の位置情報を取得する。Aはいつも浮かない顔をしているくせに、自分から逃げようとしなかった。金を積めば入れるエリート校、家庭教師、ピアノの稽古、礼儀作法の講習。数多ある習い事を『やらされている』感覚はするものの、彼女は何かを追い求めるように必死に自分に縋り付き、俺に褒美を乞う。
彼女は強がりなだけで、心はまだまだ子供だった。2人きりの時はよく甘えるし、何かを強請るわけでも我儘を言うわけでもないのだが、『一緒に居てくれるだけでいいの』と言うばかりで何を欲しているのかが分からなかった。いつも何処と無く泣きそうな顔をしている彼女がほっとけない自分もまた、薬のやりすぎなのだと思う。
「ご苦労様です。今日は16時から家庭教師のお時間ですので、
このままご自宅までお送り致します」
「……うん」
そう言って窓の外に目をやる彼女をちらりと見て車のエンジンを掛ける。彼女が今住む部屋は、梵天が管理する高層タワーマンションであり、言わば俺らが衣食住する寮のようなものだった。彼女に何かあれば幹部以上の誰かが駆け付けられるように、しばらくの間は俺らがそこに住まなくてはいけない条件も記載されていた。なんというか、彼女の父親は何処までも抜かりない印象が強く、彼女を必要に守っている雰囲気を漂わせていた。
Aは窓の外に居る他校の生徒の様子を目で追い、羨望の眼差しを向けている。アイスを片手に楽しく雑談する女子高生。スカートの丈も短く、カラオケ店に足を運んでいく彼女達を見ては、その様子を終始見つめる彼女の髪の毛にふと手を伸ばし優しく撫でる。これ以上見させると彼女の何かが壊れてしまう気がしてならなかった。
「擽ったいよ」
そう言って苦笑いをする彼女の瞳は心做しか潤んでいるように見えた。俺は彼女の耳に手を伸ばして、その形を確かめるようにゆっくりと撫でる。ぴくりと身体が揺れた彼女の唇に自分の顔を近づける。これも立派な規則違反だった。
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ぱむむ(プロフ) - 私も応援してます♡春千夜の作品大好きです♡ (2021年11月12日 7時) (レス) @page5 id: ac3050bbcb (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ面白いです! (2021年11月12日 5時) (レス) @page5 id: 15d4b06566 (このIDを非表示/違反報告)
43 −ヨミ−(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します( ᵕᴗᵕ ) 新作有難う御座います…! レモン様の書かれる小説いつも素敵で楽しませて頂いております´`* 更新お疲れ様です、応援しております( . .)" (2021年11月12日 0時) (レス) @page5 id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レモン | 作成日時:2021年11月12日 0時