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朝8時丁度。俺がお嬢様を学校まで送り届けることから1日が始まる。基本俺らの仕事は深夜にかけて行われる為、彼女を送り届けてから睡眠を取るような習慣を身に付けている。俺が運転する車の助手席に乗る彼女はいつも浮かない顔をしていた。思春期たるもの大人に反抗したがるお年頃なのだと思ってはいたが、彼女の場合どうやらそういうものでもないらしい。

学校の前に着き、周りにも高級車が何台かちらつく中、なかなか車から出ようとしない彼女の顔を覗き込み一度外に出る。道路の状態を確認し、助手席の方まで足を運ぶと、ゆっくりと扉を開け静かに手を差し出す。



「お手をどうぞ」



俺がそう言うものの、彼女は下を向きながら黙り込む。何か機嫌を損ねたか?回らない頭で必死に考え込むが、生憎歳下の女が考えてることなんて分かりやしない。「どこか身体の具合でも?」 そう付け加えた俺の目を見つめた彼女は、目の前に差し出された手に自分の手を重ね、軽く握る。




「…行かなきゃダメ?」




そう言って上目遣いで俺を見つめる彼女の表情は相変わらず暗いままだった。彼女の通う学校は所謂『お嬢様学校』というもので、汚らわしいものを一切取り入れない女子校だった。何か嫌がらせをさせられたのだろうか。俺は軽く息を吐き、彼女の頬に手を伸ばす。

期待したような、少し熱の帯びた彼女の瞼に優しくキスを落としては安心させるように微笑みかける。優しく握った彼女の手の甲に唇を近付け、再び口付けを落とす。それに反応した彼女は肩を揺らし、顔を真っ赤に彩っていく。何にも染まっていない純白な彼女の身体に手を伸ばしかけては、手を引っこめる。もどかしい距離に頭が蕩けてしまいそうだった。

これも睡眠時間が足りてないせいだろうか。そんなことを思う俺は彼女の身体から距離を取り、偽りの笑みを浮かべる。



「いつも通り、15時にはお迎えにあがります。」



「…ん」



もう少し駄々を捏ねるかと思った彼女は諦めが付いたようで、俺の手を離しては「…行ってくる」と言って校門へと足を運ぶ。すれ違っていく友人らしき人物に「ご機嫌よう」と声を掛けられ、たわいもない話をしているのを目の当たりにした俺は、深く溜息をつき車を再び走らせる。




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ぱむむ(プロフ) - 私も応援してます♡春千夜の作品大好きです♡ (2021年11月12日 7時) (レス) @page5 id: ac3050bbcb (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ面白いです! (2021年11月12日 5時) (レス) @page5 id: 15d4b06566 (このIDを非表示/違反報告)
43 −ヨミ−(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します( ᵕᴗᵕ ) 新作有難う御座います…! レモン様の書かれる小説いつも素敵で楽しませて頂いております´`* 更新お疲れ様です、応援しております( . .)" (2021年11月12日 0時) (レス) @page5 id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモン | 作成日時:2021年11月12日 0時

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