young lady ページ1
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｢…春千夜、今日も夜からお仕事？｣
｢はい。もう遅いので先に休まれてください｣
そう言って綺麗に笑う彼の言葉が叶うことなんて一度もなかった。機嫌を損ねて下を向く私の頭に手を乗せて、優しく撫でる彼のことなんて少しも知りやしない。いや、教えてくれないだけなのだけれど。私は昔から自由が無かった。
｢…わたしも耳に綺麗なアクセサリーを付けたい｣
そう言って、駄々を捏ねるように彼の腰に抱きついて胸板に頭を押し付ける私の言葉に黙り込んだ彼は何も言わない。しばらく沈黙の時間が過ぎていって、｢…それはお父様の許可が必要ですね｣と苦笑いをする彼もまた、よく誤魔化す。
彼が、いいや、『彼達』がなんの仕事をしているのか、絶対に入ってくるなと禁じられている彼の部屋の中も、何も知らない私の心は永遠に子供のままだった。今年で１８になるのにまだまだ子供扱いをしてくる父親にも嫌気がさす。世話役なんてものがなくても、全部１人で出来るのに。
｢…春千夜はいつも夜に何をしているの？｣
私達2人の中の暗黙のルールと言っていいほどの事柄を口に出す。私の言葉に目を見開いた彼は少しの間黙り込んで、私の頬に手を伸ばす。擽ったさで片目を細める私に柔らかく微笑む彼に心臓が鳴り響き、甘ったるい時間だけが私を支配していった。
｢秘密です｣
以前、そう問いた時に『申し訳ありませんが、それはお答えできません』と言われた時よりかは成長したかと思われるのだが、透明な彼の笑顔は誰よりも優しく思えた。私の耳朶に指を滑らせて目を細める彼もまた、私の心を掴んでは離さない。
｢…いつになったら教えてくれるの？｣
｢お嬢様がもう少し大きくなられた時にお教えしますよ｣
そう言って私の唇にそっとキスを落とした彼と瞳がかち合う。伏せ目がちの目に、長い睫毛が彼の肌に影を落とす。いつだって私に優しく愛撫してくれる彼は、私の目を見ては柔らかく微笑みかけ、自分の心臓の鼓動が鳴り響くのを感じた。
そんな彼は｢それでは。失礼します｣とだけ言って私の部屋を後にする。少しだけ甘い自分の唇に手を伸ばしてみては、彼が居なくなった寂しさに身を捩らせる。本当はもっと一緒に居たい。世話役なんかじゃなくて、恋人として。そんな儚い想いが伝わらないのはきっと私がまだ子供だから。１人分にしては広すぎる部屋に今日も私は縋り付く。
▷▶︎▷
1.『世話役の任務は午前8時から午後10時まで』
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ぱむむ(プロフ) - 私も応援してます♡春千夜の作品大好きです♡ (2021年11月12日 7時) (
レス) @page5 id: ac3050bbcb (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めっちゃ面白いです！ (2021年11月12日 5時) (レス) @page5 id: 15d4b06566 (このIDを非表示/違反報告)
43 −ヨミ−(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します( ᵕᴗᵕ ) 新作有難う御座います…！ レモン様の書かれる小説いつも素敵で楽しませて頂いております´`* 更新お疲れ様です、応援しております( . .)" (2021年11月12日 0時) (レス) @page5 id: 1d67640196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レモン
| 作成日時：2021年11月12日 0時
