青の少年: 後編 (ページ5)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:15,074 hit

55:青の少年ページ5

急な3人の来客にも、リリーは一切こちらを向かなかった。
ただじっとパーシー・ブライアンを見つめるのみ。
だが、そのリリーの格好はいつもと違っていた。
ロッシ・プレンティスが二階に上がってきた。
そして3人を見、リリーを見つめて固まった。
驚いた様子で。

ただ一人、驚かなかったのはリードだけだった。

一歩、リードがリリーに向かって踏み出した。
「止まれ！！」
リリーが叫ぶ。
リードは立ち止まり、「リリー」と彼を呼んだ。

「リリー、銃を下げるんだ」
「うるさい.......黙れ」
「リリー」

リードは気づいていた。
銃を持つリリーの手が、僅に震えていることに。

「そんなことしても、楽にはならないんだよ」
「黙れよ.........」
「君には分かってるだろ」
「黙れってば！！！」

キッと鋭い目つきでリリーがリードを睨んだ。
彼の目には涙が溜まっていた。
そして頬は高揚し、赤くなっている。

「あんたに何が分かるんだ...何が分かるんだ！！
僕の何が！！」
そして、リリーは自分の格好を見せるように、こちらを向いた。
だが銃口はブライアンに向けたままだった。

白い、薄い生地のワンピース。
細かい刺繍が施され、おそらくヴィンテージものであろう。
古いデザインだが、決して古くさくはない。

ソレをリリーが着ていた。

化粧をしたのか、元から赤い唇が、いつもよりも赤く艶めいている。
下着は脱がされたのか、履いていなかった。

「僕が好きでこんな格好をしているとでも？
そんなわけがない！
こいつらの余興に付き合わされてるんだ！
もう何年も前から！！」

美しかった。
男性的な身体つきはワンピースの下からでも見て取れる。
だが、下を見なければ確実に女性と間違えるー....。
伸びた青い髪が余計に彼を女性と錯覚させる。

美しい。
誘惑するかのように赤い唇も、うっすらと布ごしから分かる、華奢で触れれば折れそうな身体つきも。
大抵の人は、男だと分かっていてもゾクリとするのだろう。
憂い帯び、ワンピースを着せられた彼は確かに美しかった。

だが、作り物の美しさだ。
リードは、リリーがキャンピングカーから出てきた時の、あの「素」のままのリリーの方がよっぽど美しく思えた。

初めてリリーと出会った時も、リリーは同じようなスカートを履いていた。
何かあると疑ったが、彼がトランスジェンダーである可能性があった。

だからリードは誰にもこのことを話さなかったのである。