青の少年: 後編 (ページ28)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:15,076 hit

教会ページ28

教会の門は常に開かれている

という言葉は大抵信仰上の意味で使われる言葉だが、今回は本当に門は開いたままだったのである。

教会は薄暗かった。
いつの時代だ、とツッコミたくなるような古いランプがいくつか置かれており、わずかに光るばかりである。

シンと静まり返っていて人の気配は感じられなかった。

中に入れた瞬間にさっきまでマシになっていた足の痛みが一気にドッと来た。
正に足が棒のようになった。
足以外にも疲労感に襲われてそのまま長椅子にドサリと寝転がるーというよりも倒れこむ。

足にジワジワと血が巡っていく感覚が自分でもわかる。
歩いているときは「今なら2秒で寝れる」と本気で考えていたが実際は目を閉じても寝れはしなかった。
足の痛みが酷くて眠れない。

呻きながらそう言うと、「それでもいいから目だけでも閉じてろ」と返された。
声から疲れを感じ取れ、ああなんだ、彼も疲れていたのかと変な安心感に襲われた。
だが疲れているにもかかわらず、彼は自分のようにすぐには椅子に腰掛けもしなかった。

「誰かいませんか」と言いながらあちこちを回っていた。
「休まないの...」そう呟いたが聞こえていないようだった。
足が酷く痛む。このままでは寝れないので多少撫でてやったり揉んでやったりする。
濡れた肌が体温を低くさせて、寒く感じる。

絶対眠れないそう思っていたが、同僚が歩き回る足音を聞いていると段々と瞼が降り始めた。
疲れた身体が強制的に眠りに引き込まれる。
気づけば夢も見ないほどぐっすりと深い眠りについていたのである。

そして歩き回っていた同僚が疲れに負けて眠りについたのもそのすぐ後だった。

＊

眩しい朝日に自然と目が覚めた。
薄めを開くと視界がぼやけている。そうだ、眼鏡。

眠りに落ちる前に近くに置いたはずとだと手探りで見つけ出す。
眼鏡をかけると少し頭がスッキリとした。

そこで自分に毛布がかけられていることに気がついた。頭の下には白い枕が置かれていた。

同僚がしてくれたのか。
そう思い彼の姿を探そうと顔を上げると、目の前に大きなステンドグラスがあることに気がつく。
昨日は疲れていたし、薄暗かったため気づかなかったのだろう。
だが美しいステンドグラスだった。

聖母マリアが幼いイエス・キリストを抱きしめている。
珍しい事にマリアは白い服で描かれていた。
そして片手には彼女を表す白百合も握られている。
僅かに微笑みを浮かべた彼女は繊細で美しい。