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20分間 ページ24

1時間にも感じるほど、長いような、でも短いような。
腰に回された手が離れていったのと同時に、キスも終わってしまう。

「......愛してる」
リリーの口からポロッと溢れた言葉に、マイクは複雑な表情を見せた。

「この町を出ていくんだ」
続けてそう言うと、マイクは驚いた顔をした。
「え?」
「今日にはもうFBIの捜査官たちと一緒にこの町を出る」
「そんなのー...聞いてない」
「距離は離れるけど、マイクとやり直したい」

許されるとは思っていなかった。
でも、キスをしてくれた。
やり直したかった。
今度は誰にも邪魔されないところで。


「........恋人がいる」
ガンッと思い切りハンマーで頭を殴られたような衝撃だった。

言われた言葉が理解できず、しばらく固まった。

「え...?」
「...ダイアナと、付き合ってるんだ。今」
付き合ってる?恋人がいる?しかも.....女だ。

混乱に頭が追いつかない。
じゃあなんだった?
なんだったんだ、今のキスは。

「じゃあどうして、キスなんかしたんだよ」
「それは...」
「同情?僕が可哀想だから?
僕をもう愛せないから、申し訳なくてキスしたの?」

ずっと黙っていたマイクが怒ったように立ち上がった。
「責めるなよ....!
大体さっきのキスは、リリーからだっただろ?」
「お前だって腰に手を回したくせに」
「確かにそうだけど....!
そっちだって町を出ること黙ってたのに!俺を責められるかよ!それにー...!!」

そこまで言ってマイクはハッとした後慌てて口をつぐんだようだった。

その様子にドキリと嫌な予感がする。
「何?なんだよ、それに....の後何言おうとしたんだよ」

マイクは青ざめた顔で首を横に振った。

「なんでもない」
「嘘だ!言えよ!」

摑みかかると、マイクは後悔の念をわずかにみせ、そして怒りと涙が混じった顔でリリーを真っ直ぐ見つめた。

「それに....なんだ?言えよ」

促したリリーの態度が気に食わないのか。
マイクはついに白状した。
「......兄貴が...サイモンがお前にしてたこと、知ってる」

足元から、崩れていく感じがする。
力が抜ける。

「........は?」

頭の中が真っ白になっていく。
息が苦しい。
体が震えてうまく動かない。

「あの、集会の.......」

マイクがそこまで言ったとき。
リリーは走って逃げ出した。
リード達にも目もくれず、怪物から逃げるかのように走った。






さっきの幸せに思えたあの瞬間は、どこに行ってしまったんだろう。

あの優しいキスは。

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兎月 - 更新楽しみにしておりました!数少ないクリミナルマインドの小説でこんなにハイクオリティな作品に出会えてとても嬉しいです。これからも応援してます!! (2018年8月28日 17時) (レス) id: 4674156afc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:1937 | 作成日時:2018年5月19日 1時

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