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その後僕は王を処刑した。
僕は処刑人だ。僕は、僕は。
2700人以上の人間の首をはねた。忘れられない処刑前のあの鼓動の速さ。皆、皆泣きわめいてくれれば良かったのだ。
こんなのは間違っていると。こんな死刑制度はおかしいのだと。泣いて命を乞うてくれれば民衆の心もゆりうごいたのかもしれないのに。ただ一人を除いて皆一様に、静かに頭と体を切り離された。
マリーアントワネットは、みなご存知だろう。
よく｢パンがなければブリオシュを食べれば良い｣と豪語し民衆の反感を買った女王だとされている。実際にはそんなことは言っておらず彼女を妬んだ貴族達の妄言である。
彼女は慎み深く、貴族の中の誰よりも合理的で慈愛があった。
処刑の朝、彼女に朝食は何がいいかと聞きに行った者に対して、｢朝食は要りません。もう、全ては終わったのです｣と話した。
そして処刑のとき、彼女の長い髪は、首が切れない場合があるといけないからとばっさり切られていた。僕はそれを見て敬愛する王女の姿に胸を痛ませた。
それがいけなかったのだろう、彼女が誤ってほうけていた僕の足を踏んでしまったのだ。
｢ごめんなさいムッシュ、わざとではないのよ｣
僕はその言葉が何よりも嬉しかった。妻以外の人間に、人として扱われたことなどなかった。それを敬愛する王女から、最期の最後に。
涙をこらえた。
彼女をその場につかせると、僕はギロチンの刃を下ろした。
｢共和国万歳！！｣
｢共和国万歳！！！！｣
12時15分。僕は敬愛する王女の首をこの手で切り落とした。紛れもなく、それは本当で。
群衆の笑い声が、僕をひどく揶揄しているように聞こえて。
何が共和国なのだ。何が悲しくて僕は人の首をはねたんだ。2700人以上もの命をこの手で、ただ、機械のように。
｢共和国万歳！！！！！！！｣
群衆が叫び続ける。終わったのだと。
僕はフランスを愛している。それでも、僕はフランスに愛されてはいない。
その日家に帰ると、彼女の最期の言葉と血飛沫が頭を駆け巡った。
机のシミが血飛沫に見えた。寝れない。ものを食べれない。痛い。目の前で喜んだ群衆が頭から離れない。人の死を喜んだ彼らが、僕を侮蔑の目で見る。
｢すまない、マリー、マリー僕は君を｣
痛みなく、殺せただろうか。
マリーアントワネット (アママリ気味)→←シャルル･アンリ･サンソン 1
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作者名：金魚屋 | 作成日時：2018年1月28日 14時
