キルケー(捏造設定あり) ページ3
行かないでくれ。願っても思っても男は止まらなかった。いつまでもいつまでも悪夢が私を襲うのだ。
｢愛してる｣
これは呪縛の言葉だ。愛ってなんだ、愛を私は知ってるのか、愛を与えたのか。知りもしないくせに私は愛を男どもに囁くのだ。
人は私をこう呼ぶ、大魔女キルケーと。
ああそうさ私は大魔女様だ。太陽神と女神の子どもなのだ。最強の魔法使いだとも。
魔法は毒にも薬にもなる。正直に言えば魔法なんか万能とも言えるレベルさ。
そう、私の魔法はほぼ万能だ。あの男に私を愛せと魔法を再び使えば私は愛されあの場に残らせられたのだろう。その愛を真ととるか虚ととるかは別として、だ。
バカみたいだろう。私はそれをずっと引きずっている。何度も忘れようとしたさ。できないんだ。神様だからね、忘れられない。
あの、そう、確か金色でやたらとピカピカしてて、傲慢で欲深くて暴君、そうだギルガメッシュ。最古の王。奴は忘却できない体だが、私もそれと同じだ。
奴も難儀な男だと思う。人間の血が入った者が忘却できない上に千里眼と似たあの目など、普通の人間ならばとっくに精神が壊れているだろう。よく生きたものだと思うよ、私はね。意見はそれぞれだろうけどさ。
話が逸れた。私は愛の話をしてたんだ。そう、愛。情愛、親愛、他にもあるだろう。たくさんの愛がある。
私はメディアというまだほ〜んの小さいガキんちょを育てていた。なんとも言えないが、私は苦手なんだ。憎たらしい。あの人を食ったような、きっと何かやらかすとは思っていたがいやはや、私の予感は当たるものだね。大魔女様々の予感だ。
あの娘も可哀想に、間が悪く、運も悪かったんだ。彼女の愛した男もそれなりの苦悩や紆余曲折を経て彼女に向き合った様だが、人間は脆く弱い。あの結果は悲劇と言わざるを得ないだろう。
愛にはそれぞれの形がある。
ならば、私がメディアへ向けた感情は愛と呼べるのか。呼んで良いのか。私が産んだ訳ではない。そう、そんな生易しい話ではないのだ。
彼女を育てた。弟子として。
……子として？
間違いだ。
全部全部間違いだ。もうたくさんだ。たくさんの愛とたくさんの間違いばかりだ。痛い。こんなにも心が痛い。
何を考えても、結局あの男に行き着くのだ。
私は間違った。たった一言、それさえ言えば良かったのに、私の口からは正反対の言葉。
｢どこへでも行けばいい｣
言いたかった。痛かった。
｢連れてって……｣
今更、君に言ってもね。バカだ
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作者名：金魚屋 | 作成日時：2018年1月28日 14時
