16 ページ16
．
＿＿＿＿＿＿突然だが、自他共に認める最強を背負った五条悟には初恋の相手が居る。
その相手に関することで覚えているのは、顔でも声でも名前でもなく、この目で見た呪力と術式のみ。
このことに関して夏油らに相談したところ、案の定「それだけの情報で見つかったら苦労しないよね」との返答をくらった。まぁ正論である。
普段なら「俺正論嫌いなんだよね」と言う五条もこの時ばかりは正論を前に頭を垂れる他無かった。
＿＿＿しかしそんな【まさか】が起こったのが、今年の春のこと。
去年入学してきた彼らも揃って二年に昇級し、新しい後輩は骨がある奴がいいな、なんてことを夏油と話していた五条は、グラウンドを走る一人の女生徒に釘付けとなった。
正確には、サングラス越しでも見えた彼女の“呪力”と“術式”に、彼は釘付けとなった。
……同じだ。
それはサングラスをズラして見たとしても変わらなかった。
「ん？あぁ、彼らが例の新入生だね」
急に立ち止まる五条を訝しんで引き返してきた夏油は、彼の視線の先にいる三人に視線を移してそう言葉をこぼす。
彼ら三人とも、自分達と同じく呪霊と戦う術を持っているという点以外は、特に普通の後輩たちだ。
てっきり五条もそれくらいの認識だと思っていたのだが、どうにも驚愕で固まった横顔はそうではないと全力で主張している。
夏油はもう一度彼の視線の先を正確に追った。
どこかの外国の血が混ざっていそうな金髪の彼、でもなく、恐らくその横で朗らかに笑っている彼、でもない。
となると残るは、三人組の紅一点。
動きやすいよう肩より上で切り揃えられた黒髪に、少し日本人離れした翡翠色の瞳を持つ小柄な少女。
半分は興味本位、半分は冗談のつもりで夏油は口を開いた。
「まさかだけど、彼女が例の“初恋の相手”とか言わないよね」
「……」
軽い気持ちで問いかけた夏油はその瞬間、誰に向けてというわけでもなく心中で「冗談のつもりだった」「悪気はなかった」との釈明を図った。
というのも、あの質問を投げかけた途端、明らかに彼の挙動が可笑しくなったのだ。
ゆっくりとこちらを向く五条の首はさながら錆びついたロボットのそれ。
ギギギ、という空耳もそのうち聞こえてきそうだ。
「…………マジ？」
「マジ」
頬を赤く染めて困惑する親友を前に、夏油は無言で額を押さえた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2375人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
縁儺 - (夏油目線です)悟、流石に夢主に彼氏はないだろう 悟「うっさい！」はいはいそれは誠にすみませんでした五条悟様☆w 悟「ﾁｯ」 (2022年4月28日 18時) (
レス) @page38 id: a1a94a6f52 (このIDを非表示/違反報告)
薄味(プロフ) - Hrmna_119さん» コメントありがとうございます！続きも頑張ります！ (2022年2月13日 11時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
Hrmna_119(プロフ) - とっても楽しそうで面白いです！（？）続き待ってま〜す！ (2022年2月11日 23時) (レス) @page28 id: 4e57ef443a (このIDを非表示/違反報告)
薄味(プロフ) - 石川祐希は神☆さん» コメントありがとうございます！キャラ同士のやりとりは私もノリノリで書かせていただいてます（笑）更新頑張ります！ (2022年2月9日 23時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
石川祐希は神☆ - コメント失礼します。めっちゃ面白いです！！この話！キャラ同士のやりとりとか…笑 更新頑張ってください! (2022年2月9日 7時) (レス) @page27 id: e905b060a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
