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52.4 ページ9

黒side

俺の中のザワザワが収まる所か、どんどん積み重なってきて、あと少しで溢れそうだ。

ほんのちょっと押されただけで、コップから溢れる水のようにぽたぽたと。


樹「教えて?ねっ?...あ!!!!」

ニカッとした笑顔から、眉を下げた困ったような笑みを浮かべて、俺の頭に樹の手が伸びようとした時だった。

ガシャンと響く音。

あの日と同じ、ガラス瓶が割れる音。

ザワザワが、ぽたぽたと...

どころか、一気に崩壊するような出来事が一瞬で起きた。

樹「った!...あ、大丈夫です!!そちらこそ、大丈夫ですか!?」


樹の手から、赤い血が流れてぽたりと茶色い店の床に落ちた。

あの日、もしかしたら起きていたかもしれないこと。

樹の呻き声と、真っ赤な血を流して横たわる樹の姿が一気にフラッシュバックしてきた。

今の樹は..?
目の前で笑っていた樹は、どこ?

北「じゅり..?樹っ!..ぃ..はぁっ..樹どこっ!!!」


何も見えないくらい、世界が狭まる。
心臓がどくどくと脈うち、それと沿うように頭はガンガンと痛みはじめる。

北「ヒュ..はぁっは、じゅ、り..やだっ..いなく..なんないでっ!..ハァハァ.んっ..ぁ」


指先が、冷えていく感覚。


樹「北斗っ!!いなくなんない、俺いるよ。今、お前を抱きしめてるの樹だよ。」



冷たくなっていく身体に、人の温もりが感じられる。俺よりも華奢で、細い身体。

何年も変わらない、甘いバニラの香り。

...ああ、樹だ。

たったそれだけで、狭まった世界がぐいんと伸びたように開けていった。




•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚



青side


立ち上がったのと同時。


ちょうど通りかかった店員さんとぶつかって、ビール瓶が落ちて割れてしまった。


ちょっと切れてしまって、ピリッとした痛みが走った。


樹「はは、ちょっと切れちゃ...え!?北斗!!」



なんか変な空気になっちゃったし、北斗にでも馬鹿にしてもらおうと思ったのに。


振り返った先にいた北斗は、しょうがねぇなって感じの顔ではなくて。



大きく肩を上下させて、過呼吸を起こしていた。


樹「ほくと、どうしたの!?」


北「ヒュ...ぁっ、はぁっ..じゅ、り..どこ.?ハァハァ、げほっけほっ!!..ぃや..どこ!!」


樹「え!?..北斗、俺ここだよ。ほら、ゆっくり。ゆっくりだよ」

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作者名:みかん | 作成日時:2021年2月3日 23時

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