Through the rain 6 (ページ8)

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黒side

あの日から、樹が近くにいないと不安でしょうがなかった。

特に家に帰ってからの夜は、目を瞑っただけで、樹が苦しんでいる姿が鮮明に思い浮かぶようになった。

ついに、あの旅館の一室が夢に出てくるようになったのは、ここ数日だ。

俺が必死に走って、部屋に駆けつける。

その真ん中には、頭から真っ赤な血を流した樹がピクリとも動かず、横たわっていて。

畳に、樹の血が流れシミができているんだ。

俺が泣き叫んで、「じゅりっ!!じゅり!!」って何度呼んでもあいつの目がひらくことはなく...

そんな夢まで。

正直、自分がここまで繊細だなんて思っていなかったよ。

曲がりなりにも、10数年こういう仕事をしている。
色々なことを経験して、もう二度と言われたくないような、酷くしんどい言葉だって言われて来た。

それだって、どうにか自分で消化し乗り越えたのに...

たかがドッキリだ。

そのたかがに、俺は追い込まれていった。

もしかしたら...

本当に。

って、どこにも根拠がないことを思っては打ち消して。

それでも不安が消えることはなく、ずっとずっと俺の頭に居座っている。

自分でも気づいていなかった。

樹の周りをうろついていることさ...

樹に言われて、やっと「そうだったの..?」みたいな。

ああ、俺やばいところまで来てしまっているっぽい。

「誰でも」いいから、助けて....じゃなくて。
俺は、あいつに。

''田中樹''に助けてもらいたくて、しょうがないんだ。

きっと...

だから。

北「ぃく...じゅり、飲み行く..」

そう伝えた時のあいつの顔は、心底驚いたって顔。

俺...やらかしたかなって思って、俺の面倒くさいそれが出かけたけど。

樹は、ニカッと笑って「行こう!」って。

その笑顔の樹が、いつもよりほんのり赤い顔で俺の向かいに座っている。

北「....樹、なんか...その、ありがとね」

樹「なぁあんだよ!!お前、最近おかしいぞ?」

ビールをグッと煽って、俺を見つめてきた。

北「そっか...やっぱさ、俺...」

正直怖かった。

ジェシーも京本も、高地、慎太郎も。

みんないつも通り、樹とふざけあって笑いあって。

俺だけ、ずっと取り残されているみたい。

樹「..北斗?泣いてるの?」

北「え?...泣いてないよ..酒のせい」

そっと頬に手をあてると、湿った感覚。

いよいよ、やばいんだ。

そう分かっているのに、どうしても素直になれない。

苦しい、安心したい。

この6人がずっといるって、目の前の樹から聞きたいのに。