28話 ページ28
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インターホンを押す指が、寸前で止まる。
これを鳴らせば、2週間ほど会っていない牛沢さんが出てくるのだろうか。
何も変わらず、余裕を見せてくるのだろうか。
そう考えると、心臓がバクバクと音を立てる。
しかし、ここまで来て引き下がれない。
昨晩キヨさんに、家に呼ばれたとLIMEをしたら、行けと言われた。
このチャンスを逃すわけにはいかねェだろ、と。
その通りだ。
私は、意を決してインターホンを押した。
牛「…あ、久しぶり。入って」
『おじゃまします…』
どことなく気まずい空気だけれど、牛沢さんは気を遣っていつも通りにしてくれる。
目の前に出されたコップには、もくもくと湯気を立てるココアが入っていた。
牛「急に呼んじまってわりィ。この前から、連絡もできてなくて…」
ちょっと忙しくて、と顔の前で手を合わせる牛沢さんは、正直かわいい。
ヤンキーから助けてくれた時はかっこよかったけれど。
こういう可愛い一面もあるのだから、本当にズルい。
『いや、私の方こそ…!というか、意味の分からないこと言ったのは私ですし』
牛「…意味、分かるよ。俺は」
私の発言に、牛沢さんは右口角を上げた。
それは、子供を見守るような、親のような。
結局恋愛対象ではないのかな、と考える。
牛「俺のこと、どう思ってる?」
頭の中に、キヨさんが浮かんだ。
相談に乗ってくれた時の、優しい声。
いつもはあんなに冷たいのに、ああいう時は優しいのだ。
そんなキヨさんが、チャンスを逃すな、と言っている。
そう、これはチャンス。
『…好きです…!』
大きく息を吸って言ったそのセリフ。
しばらく、部屋には静寂が流れていた。
恐る恐る顔を上げると、牛沢さんは、真っ直ぐにこちらを見ている。
牛「ごめんな」
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Lie麦マFin(プロフ) - コメントありがとうございます!夢主含め、全員が悲しい思いを経験するように意識したので、気付いてくださって嬉しいです^^* (2019年7月27日 21時) (レス) id: dc36edd03b (このIDを非表示/違反報告)
妄想少女M - 全話読ませて頂きました! 3人とも好きな人のために悲しい想いをして、実際に涙がポロリと出てきました^^; とても良いお話でした! ありがとうございました! (2019年7月27日 21時) (レス) id: 701d3cb7a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lie麦マFin | 作成日時:2019年2月13日 16時