Innocent sinners (ページ9)

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Mission.9 ページ9

あんまり踏み込んだ話じゃなきゃ大体教えてくれるよ、と言葉を残して

平塚さんが部屋を出ていったのがおよそ1時間前

『…あの、やっぱり私どこか他の部屋で、』

檜｢いいから、寝て｣

この部屋に大分気まずい時間が流れ始めて早5分

私が寝かされていたベッドは

どうやら檜山さんのベッドだったみたいで

檜｢俺のベッドが嫌なら他のやつに聞いてみるけど｣

『や、そういう訳では、ないんですけど、』

檜｢じゃあ病人なんだから、早く寝て｣

ベッドの横、私の足元の方に、ベッドに背を向けて座っている檜山さん

そんなぶっきらぼうに言われては引き下がる他なく

大人しく檜山さんのベッドに潜り直した

『檜山さん、は、どこで寝るんですか、？』

檜｢…ここ｣

少し悩む素振りを見せて、ここ、と示したのは

今彼が座っている場所

『や、でも、』

檜｢あんた1人にさせられないから｣

冷たく響いたその声に含まれた意味は

きっと現場を見た人間が脱走しないように、とか

大方そんな事だろう、と思って小さく謝った

檜｢あー…ごめん、違う｣

『え？』

檜｢熱あるし、さっき呼吸おかしかったし、それに、｣

"家族亡くしたばっかの人間、放っておけないだけ"

ふい、と顔を背けて彼はそう言った

彼は不器用すぎるくらい不器用だ

でも、きっと湧さんや安嶋さんは器用で

上手いこと話を逸らしてそばに居るんだろう

うっちーさんや豊田さんは全く違う話をし始めそう

なんて、出会ったばかりなのに変な推測をして

そっぽを向いた檜山さんに視線を向ける

月明かりしかない暗闇で檜山さんの横顔がぼんやりと縁取られて

10センチ程離れた距離、伝わらないはずの体温

その程よい冷たさの、不器用な優しさに涙が溢れて止まらなくなって

いつ眠りについたのか自分でもよく覚えていない