【第五人格】そんなつもりは無かったなんてⅡ (ページ32)

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74話　今からページ32

エマ視点

エマ(やっぱり、結ばれちゃったの……)

人のいない廊下で抱きしめられるAちゃんを見て、静かに溜め息を吐きながら立ち去る。
これは時間の問題だと分かってはいたけど……やっぱりなんだか複雑な気分。

私がAちゃんを好きになったのは、エマが欲しかった"幼さ"を持っていたからだ。
でも最近のAちゃんは、段々と大人になっていった。

相変わらずエマたちのこと大好きだけど、必要以上にはしゃがなくなった。
荘園に来た頃より、冷静に思考することが増えた。

いつまでも愛に飢えた、か弱い少女だと思っていたのに、気付けば恋人まで出来てしまった。

でも一番不思議なのは……今でもAちゃんが大好きなままって事。幼さに惹かれたはずなのに、成長したAちゃんから離れる気がないのだ。

変なの……知らないうちに、Aちゃん本人を好きになっていたのね。

一人納得しながらホールに行くと、いつも通り賑やかだった。
さて、エマもいつも通り笑ってAちゃんを待つの。だって……

エマはAちゃんの親友だから！

范無咎視点

……今、Aの後ろに庭師が居た。
立ち去る影が見えたが……まぁ、あまり気にすることでもないか。
抱きしめられたことに感動していると、Aが恥ずかしそうに体を捩った。

ナマエ「あの、無咎さん、そろそろ……」

范無咎「あぁ、すまない」

さっきまで自分から手を握ってきたとは思えない反応。何故かオレから触れると恥ずかしがる。
……そういえば、荘園に来た頃は肌に触れられるのが苦手だったと聞いたような。その名残なのだろうか？

頭中でグルグル考えすぎていると、Aがおずおず口を開く。

ナマエ「わ、私そろそろホール行くね。エマちゃん待ってると思うし……」

范無咎「ッ……あぁ、分かった」

少し寂しいと思いながらも、手を振って見送ると、Aも嬉しそうに笑ってくれた。

たった一ヶ月程のことなのに、ここまで随分と長かった。
自室に戻る途中、いつもの中庭が見える。誰もいないその場所に、あの時のAを重ねた。
……そうだ、謝必安にも報告しなくては。オレを一番に応援してくれていたからな。

静か過ぎた廊下に、ホールから聞こえる笑い声が響き始める。Aが来たことでうるさくなったんだろう。

前までは不快に感じたぼうっとする感覚が、今だけは愛しく感じた。