72話 向き合う ページ30
ナマエ「ううう無咎さん、今少し話せませんか！」
范無咎「……！？あぁ、大丈夫だ」
吃りながらも声をかけた自分を見て、無咎さんは驚いた表情を見せた。
まぁ、そうですよね〜……。顔見た瞬間回れ右猛ダッシュしてた人が、自分から(重要)話しかけに来たんだからね。
廊下には自分たち以外誰もおらず、妙にシンとしている。いつもなら誰かの声が聞こえてきてもおかしくないのに、何故か今日だけはなんの音もなくて、逆に緊張してしまう。
范無咎「……俺から、まずいいか」
ナマエ「あっ……は、はい。どぞ……」
なかなか口を開かない私にしびれを切らしたのか、無咎さんが先に話し始めた。
范無咎「昨夜は本当にすまなかった。変なことを言ったり、その……抱きしめたり、してしまって」
ナマエ「お゛あ゛……だ、大丈夫だから、あんま言われると恥ずかしい……」
范無咎「す、すまない……」
なるほど、本当に全部覚えてるの……
反省してるみたいだし、驚いたけど嫌だった訳じゃないから許してあげよう。まぁこの先酔っぱらいの介抱は絶対にしないけど()
ナマエ「私、本当は答え出てたんだ。恥ずかしくて、それどころじゃ無かったけど……」
范無咎「ッ！そ、そうだったのか」
ナマエ「うん、待たせちゃってごめんね。」
無咎さんの顔が心なしか強張ったような気がした。それでも目は逸らさず、しっかり無咎さんの方を見る。
もうそろそろ、覚悟決めなきゃ
ナマエ「昨夜のことが逆に背中を押してくれました。私も無咎さんのことが……す、好き……だな、って……」
范無咎「……えっ……！？」
ナマエ「いや本当にごめんなさい！言い訳でしかないけど、自覚したら顔見るのも恥ずかしくなっちゃって！どうしても近づけな……」
范無咎「いや、ちがうんだ。そうじゃなくて……」
一歩、ズイッと近づいてきた無咎さんに肩が跳ねる。
それに気付かず私を見つめる無咎さんの瞳は……なんだか焦ったような、余裕が無さそうだった。
范無咎「い、今なんて……」
ナマエ「わ、私も無咎さんが、好き、ってとこ……？」
范無咎「……ッ！！」
もう一度「好き」と口に出すと、無咎さんはしゃがみこんでしまった。それでも私と同じくらいの高さだ。
どうしたのかと心配になるけれど、真っ赤になった耳をみて、なんとなく察する。もしかして、喜んでくれてるのかな……？
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作者名：教六 | 作成日時：2023年4月5日 14時
