58話 傍目 ページ16
謝必安視点
謝必安「……大丈夫ですか？」
范無咎「……心配させてすまない……」
謝必安「いえ、それはいいんですけど……」
部屋に戻ってきたかと思ったら、ベットに突っ伏してひどく落ち込んでいた無咎。
最初はそっとしておいたのだが、晩飯を食べ終わって戻ってきた今までずっと落ち込んでいたらしい。流石に声をかけてみるけど……重い声で短い返事が帰ってきた。
謝必安「「考える時間がほしい」と言われたんでしょう？それならまだ分からないじゃないですか、そんなに落ち込まないで無咎」
范無咎「それは分かっているさ……頭では分かっていても、不安になるだろう」
僕の相方は、普段よりかなりネガティブになっている。恋ってすごいです、こんなに変わってしまうんですから。
なんだか心配を超えて、逆に冷製になってきた頃……ノックの音が部屋に響いた。
謝必安「……ん？誰でしょうか」
ドアの方へ向かい、覗き窓を見てみると……
謝必安「……おや」
そこにはAさんが立っていた。
少し不安そうだが決心したような表情。これは……良い方か悪い方か分からないけれど、とにかく范無咎はベッドから起き上がってくれそうですね。
ドアを少し開けて、にっこり微笑む
謝必安「こんばんは、無咎に用ですよね？」
ナマエ「あ、はい……って聞いてたの？」
謝必安「ふふ、すみません。あんなに狼狽える無咎は、珍しかったので……今無咎を起こします」
Aさんにそう言い、無咎の方ヘ早歩きで向かった。
謝必安「無咎起きて、Aさんが呼んでますよ」
范無咎「ッ……！？あ、あぁ、ありがとう必安……！」
Aさん、といった瞬間飛び上がった無咎。
全く……でもこれ以上待たされなくて良かった。あんな状態の無咎は、見ているこっちが落ち着かなくて困ります。
范無咎「すまない、待たせたか」
ナマエ「いや……えっと、起こしちゃってごめんね」
聞こえてきたそんな会話が、何故か微笑ましく思えた。
僕から見たらAさんも、無咎のことを好いている気がしますが……それは"推し"という感情なんでしょうか？
いやそれよりも……
謝必安「……無咎もあんな顔するんですね」
無意識みたいですけど、戻れないところまで行っていそう。Aさんも、厄介そうな者に好かれましたねぇ
幸せに結ばれることを願ってますよ、無咎
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作者名：教六 | 作成日時：2023年4月5日 14時
