事務所のお兄さん(兄)03 ページ8
ーーー
彼が玄関のドアノブに手をかけた時、私は何故か咄嗟に彼を呼び止めてしまう。
「?」
「えっと…さ、作業! 作業頑張ってください!」
「ありがとうございます。 あっ…後でコーヒー飲みに来ても良いですか?」
「えっ! は、はい! 是非来てください!」
"お待ちしてます"と言うと彼はニコッと微笑み、チリンチリンとドアのベルを鳴らして出て行った。
「さっきの人、イケメンでしたね」
「そうだね」
彼が出て行った後、私とバイトちゃんは引き続き皿洗いとランチの準備をしていた。
「あの、思ったんですけど…」
「ん、なに?」
「Aさんってあの人のこと好きなんですか?」
「えっ!?」
バイトちゃんの衝撃発言に、今日一の大声の"えっ!?"が出てしまう。
「なんでそうなるのよ」
「え? だって、Aさんがああやって呼び止めるのが珍しいなと思って…」
「そ、そう?」
「はい」
バイトちゃんに言われて、自分でもあの時の行動は変だったと自覚する。
「……まぁ、これからご近所になるわけだからより仲良くしないとなって思っただけよ」
「あー…確かに。 さすがAさんですね」
"自分も仲良くならないとなぁ…"と呟きながらバイトちゃんは皿洗いを続ける。
(…私が彼のことを?)
私はランチタイムの準備を続けながらバイトちゃんに言われたことを自問自答する。
(まさか。 かっこいい人だったから一瞬の感情で動いただけよ。 それに彼だったら絶対彼女がいる)
もうこれ以上余計なことを考えるのはやめよう、と思った私は無心で作業を続けたのだった。
後日、彼とその同僚たちがよく喫茶店を利用してくれるようになり、彼に彼女がいないことを知るのはまた別のお話。
END.
ーーー
幼馴染みは寂しくなった(弟)01→←事務所のお兄さん(兄)02
240人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くろいつき | 作成日時:2020年4月15日 0時