思い出になった僕の一瞬(乙)01 ページ4
※「私だけの一瞬」のおついち視点
(前回の話はこちらの目次から)
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桜が満開の今日この頃。
僕は毎年この時期になると、昔の教え子だったある女子高生のことを思い出す。
彼女の名前はAさん。
彼女は僕が初めて高校教師になった高校の生徒だった。
Aさんとは授業以外ではあまり話したことがなかったが、あることをきっかけによく話すようになった。
そのきっかけは彼女が2年生になる前の春休み中のこと。
パシャ
僕が満開の桜の木を眺めていたら、突然彼女に写真を撮られたことがきっかけ。
「今度部活で部員募集のために写真展覧会があるんです。過去の作品も展示するんですけど、今回『春』をテーマにした新しい作品も必要で…」
何故写真を撮ったのか訊いたら、そう彼女は答えた。
(そういえば去年の文化祭でも展覧会をやってたなぁ…)
去年の文化祭で写真部の活動を覗いた時は、誰がどの作品かまでは見ていなかったが、かなり印象的な作品ばかりだったのを思い出す。
(ちょっと興味はあるなぁ…それに、僕の写っている写真がどんな風に撮られているのかも気になる)
そう思った僕はAさんに、写真展覧会に遊びに行くかもしれないことを伝えた。
「はい！ もし時間があれば来てください！」
伝えると彼女はそう言い残し、引き続き写真を撮るためにカメラをぶら下げてどこかへ行ってしまい、次に彼女に会ったのは写真展覧会の期間中だった。
まだ授業が本格的に始まっていないからか、質問に来る生徒もおらず、時間を持て余していた時、ふとAさんのことが気になり、展覧会に足を運んだ。
展覧会となった旧校舎の空き教室の中は、沢山の衝立が立ち並び、そこに額縁に入れた写真がずらりと飾られていた。
(あっ、いた…)
作品を見ながらどんどん奥へ進んでいくと、Aさんの背中姿が見えたのでそちらに歩を進めていく。
衝立の上部には『テーマ:春』という説明文があり、ここに彼女の作品があるのかなと探してみたが…
「…あれ、僕が写っている写真じゃないんだね」
「あ、先生！」
彼女に声をかけると僕が来たことが嬉しかったのだろう、こちらに振り返った時の彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。
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作者名：くろいつき | 作成日時：2020年4月15日 0時
