緑の魔法使い(乙)06 ページ16
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後日、私は再び森の奥へ足を踏み入れた。
あの日から彼のことが気になり、警告はされていたがもう一度会いたいと思ってしまったからだ。
(きちんとお礼もしたかったし、渡して帰るだけなら…)
私は持っている紙袋をチラッと見る。
紙袋の中には街で人気の葡萄酒が入っている。
(気に入ってくれたらいいなぁ)
少しの不安と緊張を持ちながら、私はあの日通った道を進んで行くが、一向に彼と会う気配がない。
そもそも彼がどこに住んでいるのかわからないし、もしかしたらこの森には住んでいないのかもしれない。
「んー…」
どうしたら彼に会えるのか、と考え込む私の頭にある方法が思い浮かぶ。
確実性はないものの、試してみる価値はあると思った私はスゥ…と息を吸った。
「緑の魔法使いさーん！ どこにいますかー！」
私の大声が森の中に響き渡る。
そう、彼を大声で呼ぶ作戦だ。
ここまで来れば私が異端者を呼んでることは街の人にはバレないだろうからいくら大声で呼んでも構わない。
「緑の魔法使いさーん！ この前助けていただいた者です！ きちんとお礼がしたくて、お礼の品を持ってきましたー！」
何度も声を張り上げて呼ぶが、何も起こらない。
やっぱりダメか…と諦めかけた時。
サァァァァ…
さっきまでは吹いていなかった風が突然吹き出したのだ。
(風が…あったかい？)
頬に優しく触れる風が不思議と暖かく感じる。
暖かな風は森のさらに奥へと流れて、まるで"こっちだよ"と教えてくれているような気がした。
(そっちに行けばいいのかな？)
何も根拠はないが、私は感じるままに追い風となる方向へと足を進めることにした。
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作者名：くろいつき | 作成日時：2020年4月15日 0時
