緑の魔法使い(乙)04 ページ14
ｰｰｰ
男が持っていたのは小さめのポケット型ナイフだが、人を傷つけるのには十分だ。
「これ以上叫んだり逃げようとしたら…わかってるだろうな？」
そう言いながら男はナイフの側面を私の頬に触れされる。
頬に触れているナイフが物凄く冷たく感じ、これ以上抵抗したらどうなるかを連想させられる。
「…」
私は為す術もなく抵抗するのをやめた。
「そうだ、それでいいんだよ」
抵抗しなくなった私に満足したのか、男はナイフをポケットにしまい、馬乗りの状態で私の体を反転させて私を仰向けの状態にさせた。
「へへっ、大丈夫…痛くはしないからよぉ」
男は不気味な笑顔でだんだん私に顔を近づけてくる。
私はこのまま男のされるがままになるのが怖く、ぎゅっと目を瞑ったその時──。
ゴゴゴゴ……
「ん？ 地震か？ ……！？」
「！？」
地響きがしたかと思えば、突然私たちの周りの地面からたくさん何かが飛び出してきた。
「な、なんだ！？ イバラ！？」
地面から飛び出してきたのは、たくさんのイバラ。
まるで個々に生きているかのようにウネウネと動いていて、それらの1本が男の体に巻きつき、私から引き剥がすように男を宙へ浮かせたのだ。
一方私はイバラのおかげで男から解放されたが、周りは地面から生えているイバラだらけで、上半身を起こした状態でその場から動けずにいた。
「あぁぁぁぁなんだこれは！？ やめろっ！ 離せ！…！？」
イバラに捕まった男はぎゃーぎゃーと喚いていたが、次の瞬間男に巻きついていたイバラは男をポイッと放り投げ、男は十数メートル先に転げ落ちたのだった。
幸い高さはあまりなく、命に別状はなさそうだが、あまりにも苦痛過ぎるのかうずくまっている。
すると、うずくまっている男に誰かが近づくのが見えた。
「！」
私はイバラとイバラの隙間から男に近づいた人物を確認できた瞬間、思わず言葉を失ってしまった。
十数メートル先からでもはっきりとわかる"緑色の髪"。
言い伝えに出てくる"異端者"と呼ばれる人間がそこに立っていたのだ。
ｰｰｰ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 240人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くろいつき | 作成日時：2020年4月15日 0時
