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「これ、チーノ帰ってきたら食べて」
家まで送ってくれたシャオロンさんは保冷バッグを差し出した
「近所の人がよーさんくれてんけどさ、食いきれんから。」
もう一つ手にあるバッグはきっとトントンさんの分だろう
みんなに平等に優しいから、シャオロンさんは
『わざわざ送ってくださって、ありがとうございました。』
「いや、元々家まで届けに行こうと思ってたから、それはええんやけど…」
『…チーノなら、そのうち帰ってくると思いますから。
喧嘩したときもそうでしたし、』
「それやったら、ええんやけど、」
滅多にない二人きりの時間なのに、ときめく余裕もない
…もしこのまま、帰って来なかったら、
「んじゃ、また明日な」
『はい、お気をつけて…！』
そうだ、明日もバイトがあるんだし
それにチーノの家はここだ
絶対に帰ってくる
もし帰ってきたら、なんて声かけようかな
いつもみたいに、話せなかったらどうしよう
いや、大丈夫でしょ
だって、私たち、
＿＿「A、あのさ、」
幼馴染、なんだし…
日もすっかり落ちて、薄黄色の月が野山をぼんやり浮かび上がらせる
私がお風呂に入っている間にチーノは帰ってきた
タイミングが合わないのか、意図的にずらされてるのか顔を合わせることなく、彼の部屋で布団を敷く
でも私には作戦があった
チーノはお風呂あがったらそのまま寝るはず
必然的にこの部屋に来ることになる
いつもより少しだけ近づけて敷いた布団の上で、私は今か今かと待っていた
ちゃぶ台の上にはさっき冷凍庫から出したばかりのフルーツアイス
１６本入りから私が選んだのはパイン味
チーノはグレープ。好きだから。
カタリと襖の開く音がして、チーノが無言で蚊帳の中に入ってくる
全然目合わせてくれないけど、がんばれ、私！
『チーノ！』
「…なに？」
間抜けなくらい明るい声を出した
返ってきた返事は予想よりも柔らかい声で、少し安心する
『寝る前にアイス食べよ！好きでしょ、グレープ』
はい、と差し出せば無言ではあるものの受け取ってくれた
ペリ、薄い袋を破って、１本２０円とは思えない味を噛む
『ん〜おいし！大好きこれ！』
「…俺グレープなん、よう覚えてたな」
『覚えてるよ、何回も見たもん』
「そう、やな。」
ぎこちなくても、ちょっと笑ってくれた
でも、
「これ買ってきたん？」
『んーん、シャオロンさんが持ってきて、く、れた…」
その笑顔は、冷たい夜に呑み込まれる
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桜花(プロフ) - 急にコメントすみません。最初から最後までドキドキしっぱなしで、最後めっちゃ感動しました、、！！控えめに言って最高すぎる作品です、、、出会えてよかったです。最高に素晴らしい作品に出会わせてくれて本当にありがとうございました！！ (2020年10月12日 2時) (
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作者名：レック | 作成日時：2020年8月6日 12時
