13 ページ13
｢来たか｣
『呼ばれたので』
素っ気なく答えるA
今日もまた大きめの黒パーカーを着込みフードを被っている
｢なぜフードを被っているんだ？｣
『総統には関係ありません。用件はなんですか』
昨日夕飯に来た時はロボロと多少打ち解けた様子で、案外無愛想ではないのかと思っていたんだが
｢A、そこに立ってくれ｣
指示すれば、その通りに動く
我々には情報を、彼女には最高の娯楽を。その関係以上になる気は多少ある、と見るか
…まあ恐らく、どっちでもいいと思っていそうだが
｢お前、恋人は｣
『いません』
｢今までも？｣
『いません』
｢なら、こういうことは初めてというわけだな｣
立ち上がり、Aの腰に腕を回す
自然と近くなる距離、灰色の瞳は無感情に俺を見つめていた
｢恥ずかしくないのか？｣
『いえ』
｢嬉しいか？｣
『いえ』
1トーン低く返された声に心が弾む
なんだ、好き嫌いの優劣はあるんじゃないか
『用件がないなら戻っていいですか。早くしないとロボロさんが困るので』
｢お前は困らないか？｣
『そうですね、総統を無碍に扱えないので困っています。』
｢その辺の女なら腰砕けになっているところだが｣
『では残念ながらその辺の女と同じでなかったということです。何がしたいんですか。』
冷たい声には嫌悪が滲んでいる
他人にそんな反応をされるのは久しぶりだ
俺に抱かれても身動ぎせずじっとしている彼女のフードをそっとはずす
美しい髪に指を這わせた
｢見れば見るほど美しい。今までも他の男が放っておかなかっただろう？｣
『そんな男に出会うほど広い世間で生きてきていませんから』
箱の中で生きてきたA
これほど美しく賢い女がいると知る人間はほとんどいない
『…総統、私の仕事はハッキングだと思っていたんですが、こういう事も職務なのでしょうか』
｢嫌か？｣
腰に添えていた手で背筋を撫で上げた
一瞬ビクついた体
ああ、これには弱いのか
『貴方を拒否する事と私のゲーム、天秤にかけなければならないなら後者を取りますが』
何も抵抗しない
しかし相変わらず声は低く冷ややかだ
こうも靡かないものか
｢自分の貞操は大事にした方がいいぞ｣
『貴方に言われたくありませんね』
総統室の大きめの窓からは陽の光がさしこみ、Aの髪は薄い金に輝いている
まだ昼間だが、まあいいか
髪を梳いていた手を項に添え、上を向かせる
冷めきった瞳で瞬きをした後、Aは諦めたように目を閉じた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 704人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亀丸(プロフ) - この小説に惚れて貴方様の前作も見てきました…テンポがよく一晩で読み切ってしまうほど面白かったです。今作はハッカーの話ということでこれまたダークな感じが見え隠れしていてとても楽しいです。今後の活動も応援しております (2019年11月7日 23時) (
レス) id: 072776d0d0 (このIDを非表示/違反報告)
カオル - 性癖ドストライク (2019年11月7日 0時) (レス) id: 251e5ea021 (このIDを非表示/違反報告)
遊 - めっちゃすきです！！いやもうこの小説に出たいくらい！！！(何言ってんだこいつ)もう、いや、もう！ほんとすきです！これからも頑張ってください！！！！ (2019年11月6日 22時) (レス) id: 49b5a0c72b (このIDを非表示/違反報告)
ゴミ箱には夢と希望が詰まってる。 - wrwrdさんの話を漁っていて面白そうだなーと思い見ました。そしたら、おぉーすげぇとなり。メンバーの紹介文で笑いました。面白くてすきです。最新頑張ってください。 (2019年11月6日 20時) (レス) id: 569861b1cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レック | 作成日時：2019年11月4日 18時
